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黒魔術師の恋愛事情
【青春 恋愛小説】

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黒魔術師の恋愛事情〜発覚-3

 そしてついに日曜日。
 真彦は緊張のあまり待ち合わせよりも三十分ほど早く校門に着きそうだった。家ではじっとしていられなかったから。
 ちなみに眼鏡は掛けていない。彼女の前ではできるだけ自分を見せていこうと決めているから。
 真彦が校門に着くと、そこには既に麻里の姿が有った。
「こ、高坂さん?!」
「真彦君…早かったのね」
「高坂さんも…まだ三十分前だよ?」
「私我慢できなくて九時にきちゃったの。待つのも嫌いじゃないし…そういえば真彦君、眼鏡は?」
「あ、あぁ。あれはいいんだよ。伊達眼鏡だからさ…」
 早く来て良かった、真彦はそう思った。定刻通りに来ていたら、一時間も麻里を待たせていたからだ。
「じゃあ行こうか」
「うん」
 二人は並んで歩き始めた。
 途中真彦は何度も麻里の姿に目を奪われた。いつも制服姿しか見たことが無かったが、今日はかわいらしい私服姿だからだ。
「何見つめてるのよ?」
 そう何度も麻里にからかわれてしまった程だ。そうこうしているうちに真彦の家に着いた。お互い気恥ずかしくて軽く鬱むいている。
「は、入りなよ…」
「お邪魔します…」
 それだけのことなも、長い時間がかかったように二人には思われた。

「シンプルな部屋だね…」
 麻里が真彦の部屋に入ってまず言ったセリフだ。
「もうちょっと物を増やせればと思うんだけどね…」
 昨日まで黒魔術道具で埋もれていた部屋とは死んでも言えない。
「適当に座ってて。飲物持ってくるから」
 真彦はそう言って麻里を部屋に残し、台所へと向かった。
 真彦の家は二階建て。台所は一階に、真彦の部屋は二階にある。
「落ち着け…慌てるなよ、俺」
 二つのコップに注がれた麦茶を運びながら階段を昇る時、真彦はそう呟いていた。

「高坂さん、持って来たよ」
 真彦が部屋に入った時、麻里はベッドに腰を下ろしていた。
「ありがとう…」
 麦茶を受け取った麻里は少し淋しげな声を発した。
「どうしたの?高坂さん」
「どうして…名前で呼んでくれないの?」
「え?」
「学校ではしょうがないかもしれないけどさぁ…やっぱり好きな人には名前で呼んで欲しいよ…。それに手も繋いでくれないし、その…き…キスだってまだ…」
 麻里は顔を赤く染め上げていた。
「高坂さん…」
 真彦は少し考えたが、今日までかなり悩んでいたため、すぐに結論に達することができた。
「今まで俺、女の子と付き合ったこと無いんだ。好きな子はいたんだけど、結局ダメだった。だから付き合うってのがよく判ってなかったんだ。でも、今これだけははっきりしてる。俺は麻里、君が好きになったんだよ」
「真彦君…」
「少しずつでいいから…お互いを知っていこう。それで付き合っていこうよ」
 真彦は憑き物が落ちたようにさわやかに笑えた。
「うん…ありがとう。そうじゃなきゃね」
 麻里は少し涙ぐんでそう言った。
「私たち、初めて喋ってからまだ数日だもん…少しずつでいいよね?」
「そういうことさ」
 真彦がそう言った時、麻里がふとベッドの下に目を向けた。
「…?ねぇ真彦君、これなぁに?」
 ベッドの下から見えていたのは筒状に丸められた紙だった。麻里はそれをおもむろに開く。
「あ!それは…」
 真彦の制止も時既に遅く、麻里はその紙に描かれたものを見てしまった。
「これ…魔法陣…ってやつよね?」
「…あぁ」
 その紙に描かれたもの、それは誰がどう見ても魔法陣と判るものだった。しかも真彦からすれば、それが黒魔術に使うものだというのは既に判っている。


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