SEXの条件・学級委員長 川崎静奈 A-2
「――アンタ、部活もう決めてるの?」
転校初日の休み時間、しずが俺のほうに身体を向けて聞いてきた。
「―――部活?」
この時、初対面の俺のことをいきなり「アンタ」とよぶこの女の厚かましい態度に、俺は少なからずイラっときていた。
……うざいわ……ほっといてくれや。
自分たちのテリトリーに新参者が現れた時、人はこういう一見あたりさわりのない会話を通じて、相手が敵か味方か、またどの程度のレベルのやつなのかをそれとなく判断していく。
幼い頃から転校慣れしている俺は、この手の「事情聴取」には正直うんざりしているのだ。
――うっさいな。俺が何の部活やろうとお前に関係ないやんけ
……という本音を隠して、俺は愛想よく微笑む。
「……そうやなぁ」
正直面倒臭いけどしょうがないわ。
クラスに早く馴染むためにも、こういう無難な会話を積み重ねることも必要やろ。
「――俺、前の学校でずっとサッカーやっとってん。せやし、ここでもまた続けられるとええかな」
―――答えとしてはこんなもんでええやろ。どうせ社交辞令やし。
ところがしずは、俺が想像してたのとは全く違う反応をした。
「――やめれば?」
「――は?」
軽いコミュニケーションのつもりで気軽に話していた俺は一瞬面食らった。
「サッカー部。やめときなよ」
―――なんやこいつ?何が言いたいねん?
俺はそこで初めて正面からその女の顔を見た。
しずは大まじめな顔でまっすぐ俺を見ている。
どちらかと言えばお人よしそうなその表情からは悪意のようなものは感じられへん。
「それ――どういう意味や?」
「アンタみたいなタイプは、チームプレーの部活は向かないと思う」
「は?――俺が?なんやそれ?」
さすがにカチンときて、つい語気が荒くなった。