tear-1
嘘つき…嘘つき…
ずっと愛してるって言ったくせに
ずっと側にいてあげるって言ったくせに
嘘つき…うそつき…
傘のビニールから落ちてくる雨の滴が、やけに冷たい。今日の空模様はあいにくの酷い土砂降り。今の私の心をひっくり返したみたい。
…1年半付き合っていた彼氏と別れた。原因は、彼の心変わり。
無論彼はちゃんと私を愛してくれていたはずだったし、私もそんな彼が大好きだった。結婚するって約束もしていたから、本当にずっと永遠だと思っていた。なのに…
あいつなんか…大大大嫌い…
私はそう心の中で何度も呪文のようにつぶやいた。
でも所詮そんなちっぽけな呪文じゃぁ、彼との沢山の思い出に鍵をかけることなんて到底できない。
「…ふぇぇ…。」
私は泣き出した。雨水と共に、私の涙は真っ黒なアスファルトに飲み込まれる。
コートのポケットに手を入れると、チャリっと、彼からもらったペアリングが音をたてて、痛いくらい私の胸をしめつけた。
*
「うわっ!冷てぇ…。」
…何?
「おいっ!お前大丈夫か!?」
…??
体を軽く揺すられ、私は目を覚ました。白っぽくかすんだ視界には、男が一人。ぼやけて、彼の表情は読み取れない。
「はぁ〜生きててホント良かったよ…。」
彼は相変わらず喋り続ける。…寒さで私の頭は働かない。けど雨の中で、寝てしまっていたという事だけは確かだった。
「何やってんだよ、アンタ!!こんな雨の中で…こんなにも体冷やしてさ。」
男は心配そうに私を見つめる。…私は答えなかった。喋ったら、余計熱が逃げそうで…彼の記憶が溢れ出しそうで…。
「この寒さじゃ、本当にもう少しで死んじまうところだったんだぞ?」
彼はそう言って、私の頬に触れた。ネオンの光が彼の頬をかすめる度、流れる雫がキラキラ光る。
「……ともかく、どっかもっと暖かいところに移ろう。」
彼はそう言って、私を抱え上げようと、私の背中に手を伸ばした。
「…死んじゃいたい。」
「えっ…。」
私の濡れた唇から、そんな言葉がもれた。私の腰に伸びた彼の手が止まる。
「死んじゃいたい。」
今度はもっとハッキリ言った。涙と共に再び想いが溢れ出す。
…いらない…あいつのいない毎日なんて…。あいつのいない明日なんていらない。
勉強してる時、授業中窓の外を眺めてる時、風呂の湯船の中、寝付けれない夜。
―1年半、いつも気づけばあいつのことばかり考えてた。彼は私の毎日の中心だった。私の全部が彼だった。
付き合っている中で時には、自分の気持ちが見えなくなった事もあった。だけど、今思う。やっぱり凄く好きだった。世界中の誰よりも一番…。