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tear
【青春 恋愛小説】

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tear-2

「風邪引くぞ。」
ふいに、目の前にいる彼が私を抱き上げた。
「…下ろして。私ここで死ぬんだもん。」
私はそうだだをこねるけど、彼は私の言葉を無視して歩き出す。
「やだぁ、死ぬったら…死ぬのぉ…ぅうう…。」
私の瞳からポロポロと涙がこぼれる。涙を通して見た夜の街はネオンが滲んでいた。
そんな中、彼は顔を上げたままつぶやく。
「けど、ほっとけるわけねぇだろ…。」
彼の一言は、少しぶっきらぼうだけど、とても優しい言葉だった。無機質な励ましよりも遙かに。
「でも、これからどうしたらいいのか私わからなっ……ふぇぇっ…ひっく…。」
グチャグチャの心を抱えたまま、私は彼の胸に顔を押し付け、また泣き出した。彼はやっぱり私の方を一度も見なかったけど、抱き上げてくれている彼の胸や腕の温もりを私は妙に温かく感じた。


「落ちついた?」
彼にホットミルクを渡される。…温かい。
「はぃ…ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。」
耳がカァーっとなる。いくら取り乱してたからって、見ず知らずの人にあんなこと言っちゃうなんて…。
「名前…何て呼んだらいい??」
「えっ…ぁ、はい。」
突然の彼の質問に言葉が詰まる。
「雪です。あなたは…」
「俺は隼人。」
彼はそう言って、私の肩にかかった毛布をかけなおした。そして私に優しく微笑みかける。何だか凄くホッとする…。
私は隼人の顔をまじまじと見た。大学生くらいかな…私より年上ってことは確かだ。髪は明るい茶色で、どっちかと言うと、ヤンチャしてそうな雰囲気の人。
「雪、時間大丈夫?」
私ははっとして、視線を彼から時計へと移す。
10時、か…。
「今、一人暮らししてるから…。」
私は少しうつむいた。
「へえ高校生でしょ?凄いね。」
隼人は私を見て微笑む。彼の笑顔は何でこんなに安心するんだろ。
「服乾いたから、ココ置いとくな。」
隼人はそう言って卓上に私の制服を置いた。彼の服を貸してもらっていた私は軽くうなずく。
「あの…理由聞かないんですか?」
私は恐る恐る尋ねてみる。
「理由?」
「何であんな場所で倒れてたか…とか何で死にたいなんて言ったか…とかです。」
途中、自分が何を言いたいのかわからなくなってきて、自然と語尾が小さくなった。ああ、と彼は声をあげる。
「聞いて欲しいなら、聞くけど?」
「…いえ、いいです。」
何だか少し気まずくなったので、私は話題を探すべく、彼の部屋の隅々まで視線をめぐらした。
「あっ…。」
私はテーブルの上に置かれた写真を取り上げる。写真には沢山のしわが刻まれていて、丸められた跡がうかがえた。

「綺麗な人ですね。」
写真には、隼人とその隣にスラッとした綺麗な女の人が満面の笑顔で座っている。
「…それ、俺の元カノ。」
「えっ…」
私はビクッとした。隼人がいつの間にか私のすぐ後ろにきていたからだ。
「一週間前にフラれたばっか。」
隼人はそう言ってフッと笑った。…とても寂しそうな顔で。
私はまじまじと写真を見つめる。この写真に刻まれたしわは、忘れようとしても忘れられない、彼の想いを物語っていた。
胸が痛い…この人も私と同じように苦しんでいたんだ…。
私はアイツからもらったペアリングを写真の上に重ねた。
「それは…?」
「元彼からもらった指輪です。どうしても捨てられなくて…」
私は彼を恐る恐る振り返る。彼もやっぱり私と同様に切なそうな表情を浮かべていた。
「よければ、一緒に捨てませんか?」
その瞬間、彼の表情がフッと緩む。
「いいよ…。」



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