tear-4
「だって、ここ凄く居心地がいいんだもん。」
「俺の迷惑も考えろっての。」
隼人におでこをピンっと、はじかれる。
「…痛ぁっ。ぅ〜…仕返しだっ!」
私も彼のおでこをはじきかえす。
「いてっ。」
おでこを抑えた隼人と目が合った。
ぷっ…
私達はケラケラと笑い出す。
…何か幸せかも。ううん、凄く幸せ。
「今日1日どうだった?」
コタツに潜り込みむ隼人をじぃっと見つめる。
「どうって、いつもと変わりないよ、普通。」
隼人の返事はちょっとそっけない。私は膨れてコタツの中に体を滑りこませた。
「もっと色々あるじゃんか。教授のカツラが一段とズレてたとか、友達とどっか行ったとか。」
笑いながら私は話すけど、心の奥は結構複雑。だって…私が聞きたいのはそんなことじゃないんだ。私が聞きたいのは本当は恋愛はどうかってことだけだから。
「てか、カツラの教授いねぇし。毎日同じ質問すんな。」
彼はそう言って、ココアを入れにキッチンに向かった。
私はそんな彼の後ろ姿を目を細めて眺める。
優しいくて
大人っぽくて
一緒に居ると凄くホッとして…
薄っぺらい友情しか持っていない私にとって
いつの間にか隼人は唯一の居場所になっていた
…だけど隼人に彼女ができたら、もうここには居られない。私はそれが凄く怖かった。今の私にとって、隼人は唯一気を許せる人だから…。
「ほら、お前の分。」
彼の言葉で、現実に引き戻される。
「ああ、ありがと。」
ココアを受けとる。…温かい。初めて隼人に出会った、あの日のホットミルクみたいに。
「珍しく考え事か?」
隼人はニヤニヤして私を見る。…アンタの事考えてたんだよ、この鈍チンがっ。
「うるさいな〜頭悪いみたいな言い方しないでよねっ。」
「はいはい。」
隼人は肩をすくめて笑ってみせた。む〜バカにしてるな〜。でもガッついたらまた子供扱いされちゃう…。
私は何も言わずにココアをすすった。…やっぱりとっても温かい。
「……。ココアあったかいね。初めて会った時にもらったホットミルク思い出す。」
私は隼人に微笑みかける。けど、その言葉を聞いた隼人は何故か凄く険しい顔になった。
…そのまましばらく二人の沈黙く。そして沈黙のすえ隼人が言いにくそうに口を開いた。
「あのさ、雪。」
ピンポーン…
その時、インターホンが静かに部屋に鳴り響いた。
「あっ…郵便だ。俺ちょっと出てくるわ。」
隼人はそう言葉を残して、玄関に出て行ってしまった。
私は布団をかき集める。隼人は何を言おうとしてたんだろ…。
…告白とか??
んなわけないか…。でも凄く真剣な顔してた…。
不安は私の鼓動を早くした。胸が凄く熱い。
その時。
「ん……っ??」
私は卓上に置かれた雑誌を恐る恐る持ち上げる。
…雑誌の下には見覚えのある"あの写真"があった。
「う…そ…。」
声が出ない。鼓動が一段と速さを増す。
…それは、隼人と彼の元カノのツーショット写真だった。写真には、しわが一段と刻まれてて、ところどころ色あせている。あの時私と一緒に捨てたはずなのに…。
胸がえぐりとられるような痛みを覚えた。私の目の縁にじわじわと熱いものがこみ上げてくる。
でも私にはそれが何からくる痛みかよく分からない。
だってこの写真が見つかったかっといって、私の居場所が奪われるわけじゃないじゃんか…。これが見つかったからって、今までと何にも変わらないんだから、今までと何も……。私は何度も自分に言い聞かせる。
しかし、それでも胸の痛みは少しも収まらない。
…この悲しさは、隼人に対する同情??…彼に裏切られたから??それとももっと別の…