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小さなキセキ
【大人 恋愛小説】

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小さなキセキ-4

「そうそう!あと、お堂のまわりで鬼ごっこしたり、高鬼したり。」


愛菜も、懐かしそうにまわりを見渡しながら頷く。

いつもこの場所に来ると、とても安らいだ気持ちになる。

それは、昔から馴染みのある場所だからだけではないと思う。

鬱蒼と茂る自然も、流れる空気も、すべてがどこか優しいのだ。

そんなこの場所は、今夜も私たちを迎え入れ、切り取られた空から差し込む満月の明かりが、境内をそっと照らしている。


「あ、やってるやってる。」


隣に並んでいた愛菜が、嬉しそうに一歩前を歩き出した。

今日は、夏祭りとあわせて、本堂では盆踊りも行われている。

参道と本堂のまわりは、ぽつぽつと等間隔に裸電球が吊されており、歩くのに困らない。
さらに明るくライトアップされた本堂のまわりには、たくさんの人が踊りの輪をつくっていた。

本堂に近づくにつれ、太鼓の音や、昔聞いた懐かしい盆踊りの曲、それに賑やかな声が聞こえてくる。


「ねぇねぇ、私たちも久しぶりに踊ってみない?」

「え〜踊り方なんて忘れちゃったよ〜。」

「大丈夫だよ!見よう見真似でなんとかなるって。」


愛菜と私は顔を見合わせると、つい笑ってしまった。


「ほら、受付やってるよ。」


愛菜は、渋る私を有無を言わさず引っ張っていく。

踊りの輪に加わるには、まず番号の書かれた紙をもらい、見えるところに貼る。
そうすると、地元の役員の人や見物に来た人が投票をし、上位の踊り手には賞品が出る、という仕組みだ。

私たちは、とりあえず受付を済ませ、番号札を貼った。

しかし私は、踊りの輪に加わるのには気がひけてしまい「少し見て思い出したら踊るから」と、愛菜一人を輪の中に送り出すと、持ち前の明るさですぐに輪の中に溶け込んで、まわりの人と楽しそうに踊り始めた。

投票基準には上手に踊れたかだけではなく「ユーモア賞」や「かわいかったで賞」などというものもあるので、仮装をした地元の青年団の人や、まだ幼稚園ぐらいの子まで、思い思いに踊っている。

それを眺めながら、私は自然と笑顔になっていた。

愛菜は本堂を一周して、私の前あたりまで戻って来ると、踊りながら私に手をぶんぶん大きくと振るから、なんだか恥ずかしかったけど小さく手を振りかえす。
すると、愛菜は嬉しそうに笑った。


(楽しそうだなぁ。)


そんな様子を見て、私はつい声をあげて笑ってしまった。


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