ふつう-第五話-6
「あ…あの、清さんはずっとあのお店で働いてるんですか?」
「うん、そうだねぇ。もう6年…7年目かな?ずっとあそこだよ。専門出てすぐあのお店」
「専門?」
「うん。服飾の専門学校。高校出て2年の専門行ったんだよね。中学生の時からアパレルで働きたいって思ってたからさ」
「そうなんですか…」
「救ちゃんは何かやりたいことあるの?」
「…私は…特にまだ無いですね…。模索中です…」
「そっかぁ。まぁまだ高校生だもんね。たいていの子はそうかもしれないよね」
「でも鷹丸くんは前にアパレルで働きたいって言ってましたし、他にも何人かは将来の目標持ってる人もいるので…ちょっと焦ります…」
「でもその人にはその人のペースがあるからね。救ちゃんには救ちゃんのペースがあると思うし。焦ることないよ?」
「そうですかね…」
「そうだよー。それに、逆に鷹なんかは早い方だと思うよ。周りの影響もあるだろうけど、鷹の中の時間軸は同世代の子達より進んでるから。どっちかと言えば私らに近いかなぁ」
「鷹丸くんとはいつから…?」
「あ、えーっとね…いつだったかなー…鷹が中一の時かな、あのお店に先輩に連れられて来た時からだから、もう3〜4年くらい」
「そんなにですか…」
「あの子タメにはそんなに友達いなかったんだけど、私らとは反りが合ってね」
「はぁ…」
「うちでバイト始めてから益々馴染んでね、今じゃ欠かせない大事なスタッフの一人なんだよ。高校生だからまだアルバイトなんだけど」
「そうなんですか…」
「救ちゃんは鷹とは5月からだっけ?」
「あ、はい。鷹丸くんが転校してきてからですね」
「鷹、どう?ちゃんと友達出来てる?」
「それは…もう…。他のクラスとか先輩学年にも友達たくさん出来てます。やっぱり見た目もカッコイイですしね」
「それは良かったぁ。あいつ、あんまり学校の話しないからさぁ。しかし、その鷹の友達らは鷹のどこを見て友達になったのかな」
「え?」
「まぁ見て分かるけどあの子さ、髪とか爪とか目立つじゃん?だけど鷹の面白いのは見た目以上にその中身なんだよね。鷹の周りは、ちゃんとそういうとこ見てあげてるのかなって思って」
「それは…うーん…分からないです…。でもあの外見に惹かれてる人も多いですね…」
「きっとそうだよね。今日うちのお店に鷹と一緒に女の子来たんだけど、あの子もそんな感じしたなぁ」
「えっ?」
大海のことだ…。
「今日の夕方だったかなぁ…うちに来てさ。最初メンズフロアーに行ったっぽくて、次にレディースに来て。最初鷹の彼女なのかなーって思ったんだけど、あ、違うなって」
「違う?」
「うん」
清さんは、続けて話し出した…。