ふつう-第四話-3
テラスに目をやると、皆騒がしくお喋りをし、笑い、盛り上がっている。
何の話なのかは聞こえないけど、タバコとビール片手に鷹丸も大笑いしている。
あんな笑顔、学校では一回も見たことない。
あのスタッフの方々が鷹丸くんにとってどれだけ大切なのか、この目で見た気がする。
私は、やはり鷹丸くんのことを何も知らないんだな。
そう思わずにはいられない。
と、その中でも特に美人の女性が、鷹丸くんに寄り添って肩を組んで話しをしている。
鷹丸くんも笑顔だ。
鷹丸くんにあんな風に接するなんてね…。
さすが“家族”。
「おい、すくちゃん!」
「あっ…はい!」
「なにボーっとしてんの!これとこれ、テラス持ってって!」
「あ、はい!すいません!」
何やってんだ、私。
鷹丸くんのこと考えたってさ、所詮私は普通の友達じゃない。
そんなことより、今は仕事仕事…。
結局彼等の飲み会は私が上がった後、閉店時間まで続き、二次会、三次会…と店をハシゴしては朝まで続いたとか。
しかも翌日は朝から普通にショップ営業だというから、その強さには呆れちゃう。
鷹丸くんもすごいわ…。
そういえばずっと鷹丸くんの隣にいたあの女の人は、どういう関係なんだろ…。
まぁ、私には関係ないけど、ね…。
しかし一度気になっては離れないもので、月曜になり学校で鷹丸くんに聞いてみた。
「この前の飲み会の時さ、ずっと鷹丸くんの隣に女の人いたよねー?」
「あぁ、きよらーだね」
「きよらー?」
「うん。“清”(きよら)だから、きよらー。うちのレディースのフロアリーダーでね」
「ふーん。年上?」
「うん。今年で27だったかな?結構上だね」
「そうなんだ。いやね、ずっと隣にいて楽しそうだったからさー。鷹丸くんあんなに笑うんだなーって」
「そう?まぁあの人は付き合い長いし、姉ちゃんみたいなもんだから」
「姉ちゃんねーっ…それにしては凄い仲良かったっていうかなんていうか、特別な雰囲気のような…」