憂と聖と過去と未来 epilogue-3
「おかえり、聖」
「ただいま、憂」
なぜか聖が神妙な顔で帰宅した。
「…なにかあった?」
「いや」
聖はそのままあたしの横をすり抜けていった。
どうしたんだろう…聖。
「……」
二人で向かい合って食卓についているけど、聖はいつもと違う料理を見ても反応を示さない。
今までにない状況に、なんだか不安だけが押し寄せてくる。
黙々と食事を進めていく間に、涙が出そうになる。
聖…なにがあったの?
もしかして、あたし達、終わっちゃうの?
「憂」
そんなことばかり考えていると、突然、聖があたしの名前を呼ぶ。
「……うん」
聖の真っ直ぐな瞳。
今まで大事な話をするときだけ見せる顔だ。
「なんて言っていいかわからないんだ」
「……」
聖はすぐに目を逸らした。
本当に…
「俺、すごく緊張してる。お前の前で、今までにないくらい」
「……うん」
何を言うんだろう…
「ただ、これをもらってほしい」
「……え?」
思いがけない言葉に驚く。
聖はすぐにポケットから小さな箱を取り出してあたしの前に置いた。
「……なに、これ」
わけもわからずに箱を手にとる。
その重みを感じた直後、頭が混乱し始めた。
もしかして…これって…
箱を開けると、そこには間違いなく光輝く指輪がはめられていた。
「……聖」
「あ、ああ、わかってる。仕事を辞めたくないならそれでも構わないんだ。でも、そうしたくて。今日は一日中仕事が手につかなかったんだ」
おろおろとする聖。
「……聖、可愛い」
あたしは自然に出てきた涙をこぼしながらそう言った。
これは、二人を繋ぐ誓いのリング。