憂と聖と過去と未来 7-5
「憂、俺は」
「う…うっ…ふぇっ…」
あたしはここで耐えられずに泣き出してしまった。
「憂」
「ずっと…っ…ずっと…苦しかったよぅ…聖ぃ…」
胸に引っかかった何かがとれていく。
「憂、俺もさ」
泣きじゃくるあたしの頭を撫でてくれる聖。
「わかってた…ひぐっ…聖が少しずつ近付いてくれてるって…それがうれしかったけど…あたし…恐くて…また聖を…傷つけるって…」
そう、ずっと恐かったんだ。
あたしは聖のそばにいちゃいけないんだって思ってた。
「憂、俺はもう大丈夫さ」
「でも…っ」
「憂、俺はお前を守ると決めたから、あのとき佐山との別れを選んだ。だからあれは、俺が望んだことなんだよ」
「……ぐずっ」
「だからあれでよかったんだよ、憂。結果的にお前を守れたから」
「……でも」
「俺はお前を失った」
「……違う。あたしが離れただけ」
すると聖は、小さく微笑んだ。
「だからこれからは離れないで、一緒にいよう」
「……聖」
「憂、俺はお前を愛してる」
聖は確かにそう言った。
その言葉は…聞き間違いではなかった。
「っ…うわぁぁぁん!!」
「ばか、わんわん泣くなよ」
「でもっ!でもお!聖ぃ!」
あたしはダムが決壊したかのように泣き叫んだ。
その姿は本当に子どものようでなんだか恥ずかしかったけど、それを嫌とは思わなかった。
「ずっと前から言いたかったんだ」
聖はその後、ぽつりとそう口にした。
結局、あたしはまた聖に引っ張られてここまできた。
あたしは何もしていない。
「聖…ありがとう…」
「ああ」
こんなに簡単なことだったんだ。
「聖、あたしもあなたを愛してる」
この言葉ひとつで。
世界はいとも簡単に変わってしまう。
どんな悲劇が起きても。
この言葉ひとつで。
世界は修復される。