……タイッ!? 第三話「診察しタイッ!?」-21
「匂いってきにならないか? なんかこう、酸っぱいとか甘いとかじゃなくて、すごく、変な……言いにくいような……」
「えっと、なんだろ……」
「っていうか、クンニした?」
「いや、してないけど……」
「そっか。それじゃわかんないかな……」
「……」
されることはあってもすることはない。紀夫はそんな自分の性体験を未熟と思いつつ、女性器への愛撫への憧れを芽生えさせる。
もし理恵の「遊び」がこれからも続けばそのチャンスが来る。きっとその時は彼女を……。
「あたしさ、中学のときエッチしたんだ。一個上の彼氏と」
「え? あ、あそ……へー、そうだったんだ……」
不埒な妄想をしていたところに突然の告白。焦りっぱなしの慌てっぱなしで、表情もおかしな笑いと驚きが混ざり定まらない。
「んでさ、言われたんだ。アソコ舐められてるときさ……その、臭いってさ……」
悔しそうにタオルケットを掴む綾は、そのまま覆いかぶさるようにして顔を隠す。
「ふーん。そうなんだ……」
かけるべく言葉は見つからないが、真相の究明が格段に進んだのは事実。
つまり、初体験での不用意な一言が綾の心に突き刺さり、その結果「自分の体臭」がおかしいという観念に囚われてしまったのだろう。
男子の照れ隠しであろう一言が、少女の性格に亀裂を走らせたことに憤りを感じるのは当然のこと。
「だからあいつのアレ、思い切り蹴ってやったんだ」
一方で同性のよしみか同情したくもなる。
「ん〜、こんなこといっても慰めにならにけど、アソコってオシッコするとこでもあるし、普通はそれなりに……」
「でも臭いはないだろ? 臭いなんてさ……」
「どうなんだろ。嗅いだことないからわかんねえや……なんつって……あはは」
「嗅いでみる?」
「え?」
唐突続きの展開にこれ以上驚くことも無いだろうと思っていた紀夫だが、今回もしっかり間抜けな表情をしてしまう。
「馬鹿、冗談だよ……」
嘆息をつく綾に紀夫は耳まで赤くして頭を掻く。
「はは、そうだよな。何期待してんだろうな、俺……」
最近の複雑な異性交遊のせいかどこか性に緩くなるところがあった。それはどこか里美との取り決めに背反することでもあり、一方で日々どこかで生成される興奮に似た衝動は抑えられず、女子の挙動を不自然に追うことがある。