……タイッ!? 第三話「診察しタイッ!?」-2
「……はぁ……君もやっぱり男の子だね」
さも落胆したかのようにいう里美に紀夫も困惑してしまう。
「そりゃそうでしょ」
総体後の二人の関係は悪くないどころか改善されていた。
女子八百メートル入賞という明確な栄光と折りたたみ傘の下での口約束。彼女自身、彼を「好意を寄せる異性」と見ているわけではないものの、青く心地よい息苦しさに満足していた。
紅葉に「欲求不満が解消されたとか?」などとからかわれたものの、聞き流すぐらいの余裕も生まれた。
ただ、
「女の子に勉強教えて……あーやらしい」
何故か棘をだしてしまうことがある。
「だから、俺は陸上部のマネージャーとして……」
「あーあー、聞こえませんよ。下心丸見えの男子の言い訳なんか聞きませんよーだ」
里美は今日まで何度も聞いてきた言い訳に、耳を塞いで聴こえないことをアピールする。
「もう、里美さんはどうしてそう理恵さんと俺が居るのを嫌がるのさ……」
「な、別にあたしは嫌がってなんか無いわよ。ただちょっとムカツクだけで……」
「そういうのを嫌がるっていうんじゃない? 広義の意味でさ」
「そういうのを自意識過剰っていうんじゃない? まんまの意味でさ」
「誰が自意識過剰だよ」
「君が自意識過剰だよ」
「なんだよ」
「なによ」
「ったく」
「ふんだ」
鼻息を交差させる二人はわざと離れた席に座る……が?
**――**
午後の練習の前に近くの食堂でお昼を取る三人。
学生相手に商売をしている飯処「味よし」は大盛りの大味が売りで、一人前のチャーハンですら二合近く米が使われていた。
紀夫の向かいには里美の注文した餡かけチャーハンが運ばれ、かなりのボリュームをほこり皿からこぼれてそうになっている。
「うわあ、こんなに……」
「そう? 普通じゃない?」
同じくチャーハンを頼んだ理恵はレンゲ片手にイタダキマスと手を合わせる。