由里子と痴漢2-1
〔まもなく1番線ホームに電車が到着します。危ないですから、白線の内側までお下がり下さい。〕
ラッシュのホームで待つ人々に、電車の到着を知らせるアナウンスが流れた。
由里子は、電車を待つ乗客の列に並びながら、先ほどからそわそわと回りを気にしている。
【まさか、いないわよね…。】
今日は月曜日。
ちょうど一週間前の同じ時刻に、まもなく到着するはずの通勤快速の電車内で、由里子は17年の人生で初めて痴漢に遭遇した。
本来であれば、女性にとって思い出したくない恥辱の行為のはずである。
もちろん、由里子にとっても恥ずかしく、とても人には言えない行為だった。
しかしあろうことか、痴漢である男の、手と指の巧みな動きに囚われ、由里子の体が反応してしまったことも事実なのだ。
あの時、男は由里子の尻をこねるように撫で回した。ショックのあまり、抵抗できずにいた由里子のパンティーに、ためらいもなく指を侵入させ、いやらしく音を立てながらワレメをなぞったあげく、由里子を昇天させてしまったのだ。
満員の電車内という事もあり、男の指に激しく恥部を責められながらも、由里子は声を漏らすことも許されず、必死に男が指の動きを終えるのを待った。
感じてはダメ!反応してはダメよ!と、心の中で自分自身に言い聞かせていた由里子だったが、その時すでに由里子の心と体は切り離され、男の指から繰り出される快感の波に、呑まれそうになっている。
すでにその頃、由里子の下半身からは、とめどなく温かい液体が溢れ出し、内股を伝うほどになっていた。
頭ではイケナイこと…と解りつつも、体ではますます刺激を受け入れたい…。由里子はそんな矛盾と闘っていた。
そんな時だった…。
『このままイッてごらん。』
男が耳元で、そう囁いた。
それが由里子にとっては合図だったかのように、頭の中でかろうじて握り締めていた、理性の欠片が弾け飛んだ。
と同時に、一気に目くるめく快感の渦に呑み込まれ、下半身が激しくケイレンを繰り返した。
由里子は、あの時のこと思い出すたびに、下半身がジュワッと熱くなる感覚に襲われた。
夜、眠りにつく前などは、男の指の感触を思い出し、自慰にふけると、心地よい眠りの中に堕ちることができた。
由里子の妄想の中まで支配し始めたその男は、電車の中で由里子が昇天し、激しくケイレンしている間中、うしろから強く抱きしめ、別れ際にこう言ったのだ。
『来週の月曜日、またこの電車で逢おう!』と。
由里子はこの一週間、毎日この日を待っていた…と言ってもいい。
恥ずかしながら白状すれば、男からの一方的な愛撫ではあったが、由里子の体に覚え込まされた、鮮烈な男の指の感覚を、再び味わいたいという気持ちがある。
しかしそれとは別に、電車内の痴漢という出会いではあったが、由里子を扱う時の男の優しさが、疑似恋愛のような感覚を由里子に抱かせていた。
その為、しばらく逢えなかった恋人に、これから逢う時のような、そわそわした気持ちが、今の由里子にはどうしても止められなかった。