由里子と先生2〔特別編〜茜色の保健室で〜〕-2
由里子が意識を取り戻す直前まで、佐々は由里子に付き添っていたが、6時間目終了のチャイムが鳴り、後ろ髪を引かれる思いでクラスのみんなの元へと戻っていった。
由里子が気が付いたときには、すでに保健室のベットに寝かされていたので、教室で転んだあとの記憶が、そこの部分だけ抜けおちていた。
養護教諭の話によると、教室で転倒し気を失った由里子を、佐々が抱きかかえこのベットまで運んでくれたとのことだった。
由里子はその話を聞き、急に心臓の鼓動が早くなった。
恥ずかしさから顔が赤くなっていくのを感じた由里子は、養護教諭に気付かれないよう、頭の痛みがあるフリをしてそっと顔を手でおおった。
佐々は、由里子が意識を取り戻す少し前まで付き添っていたが、授業が終わったため教室に戻った…と聞かされた。
由里子は、今この場に佐々がいないことでホッとしていた。
もし意識を取り戻したときに佐々が目の前にいたら、由里子は恥ずかしさの余り、再び気を失っていただろう。
頭を打っているので、念のため1時間くらいは休んでから帰るように…と、養護教諭は由里子を優しく諭した。
養護教諭は、このあと校外研修の予定があり、参加する他の大勢の先生方と一緒に、まもなく学校を出発しなければならない。
そのため由里子にこのまま付き添うことが出来ないことを何度も詫びた。
時間になったら佐々に来てくれるように伝えておくので、それまではゆっくり体を休めなさい…と言い残し、養護教諭は保健室をあとにした。
由里子は、まだ右の頭に鈍い痛みを感じていたが、寝かされているベットがふかふかと快適で、身を任せているのは心地良かった。
眠くは無かったが、体を休めるつもりで目を閉じていると、そのまま吸い込まれるように眠りについた。
どれくらいの時間が経ったのだろう?
目覚めた由里子は、まだぼんやりとした頭のまま、上半身をそっと起こしてみた。
手を伸ばしパーテーションを少しずらすと、夕焼けが保健室の天井や壁を茜色に染め始めていた。
ゆっくりと保健室の中を見渡すと、机のあたりに佐々の姿があった。
椅子に深く座り、プリントか何かの採点しているのだろうか?真剣な横顔がりりしい。
カタッ…。
『由里子起きたのか?具合はどうだ?』
パーテーション越しに佐々の声がした。
由里子を気遣う佐々の声はいつもより優しく、余計に由里子をドキドキさせた。
「う、うん、もう大丈夫みたい。」
由里子は佐々の声を聞いた途端、佐々に抱かれここへと運ばれたいきさつを思い出した。
由里子の心臓がさらにトクトクと早打ちする。