SEXの条件・学級委員長 川崎静奈 @-8
なんとなく格好よく聞こえるその肩書の実態は、学校生活の中で発生するしょうもないゴタゴタを全部押し付けられる「都合のいい雑用係」なのだ。
とりあえずクラスに一人それをやってくれる「キャラ」が居てくれれば、みんなその厄介な役まわりから逃れることができる。
頼られれば嫌とは言えない私の性格は、委員長にうってつけなのだろう。
でも来年は受験もあるし、本音を言えば気楽な「その他大勢」になりたいと思っている。
それでも私が学級委員をやめないのは、ヤマトも学級委員をやってるから。
私は単純に、少しでもアイツの側にいる理由が欲しいだけなのだ。
「……ま、あんまり無理すんなや。お前変に頑張りすぎるとこあるし」
「……う…うん」
鈍いんだか鋭いんだかわからないけれど、ヤマトの言葉の一つ一つが、今日はやけに胸に刺さった。
「ほな、放課後な」
「あ、ヤ…ヤマト」
立ち去ろうとする後ろ姿を、とっさに呼び止めていた。
「あ…あのさ……」
喉が急激に渇いて、舌がもつれる。
本当はもう少し心の準備とタイミングを見てからと思っていたんだけれど、気持ちが妙に急いていた。
「なんや?」
男友達に見せるような気取りのない笑顔。
ヤマトは私がフラミンゴになったなんて全然気付いていない。
彼女にしてほしいなんて
思ってないよ。
一度だけでいいから
抱いてほしいんだ。
一度だけでいいから
女として、私を見て―――。
私は大きく息を吸い込むと、ヤマトの目を真っ直ぐ見ながら、出来るだけさりげなさを装ってこう言った。
「今日……委員会のあと……時間ある?」
END