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『秋の風とジグソーパズル』
【青春 恋愛小説】

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『秋の風とジグソーパズル』-1

午前9時、寒さで目が覚めた。
布団から起き上がった体に、冷えた風が吹きつける。風?
妙に寒いと思ったら窓が開けっ放しだ。ここは二階だから、まさか泥棒に入られる心配も無いだろうが、夜寝る前くらいは窓は閉めておくべきだと思った。
夏の間はうざったくて隅のほうに追いやっていた掛け布団から、今は抜け出すのが少し辛い。もうすっかり秋だ。
俺は寝ぼけた頭を起こすためにキッチンへ向かい、一杯分の水を入れたヤカンを火にかけ、インスタントコーヒーの蓋を開いた。今日は平日だけど、講義は無い。ヤカンが鳴き始めるまでの数十秒、この暇な一日をどうやって過ごそうか、と考えた。しかし寝ぼけた頭に数十秒のタイムリミットじゃあ、大して良い案が浮かぶわけでもな
かった。
適当に淹れられたインスタントコーヒーと、トーストもしない食パン一切れをとりあえずの朝食としながら、リモコンでテレビのスイッチを入れた。この時間帯の番組はどれもつまらない。
ヴヴヴヴ……
床にほっぽってあった携帯が震えた。すぐに止まったから、メールだ。携帯を開いてメールを読んだ。
柊子からだ。
『今週末の土曜日、いつもの面子で飲み会やることにしたんだけど、場所はいつもの店、時間は午後7時。つばきも来るよね?ていうか来なさい。』
今週末?
やれやれだ。明後日じゃないか。そんな突然に言われても都合が…つくんだけどね俺の場合、暇だから。
『了解。』
と。簡潔に返信。
「いつもの面子、か。ということは、ひさぎももちろん来るよな。」
俺は携帯を閉じて床に置き、テーブルの上の空間に向かって呟いた。

ひさぎに、柊子に告白されたという相談をされたのが今から一月ほど前。夏の終わりの日曜日の午後だった。でもそれからあの二人の間になんら変化は無い。少なくとも、見かけ上は。

ひさぎの性格から考えて、今まで通り友達でいたいって答えたんだと思う。そして柊子はそれを受け入れた。というところだろうか。
それにしても、あの時、ひさぎから相談を持ちかけられた時にはさすがに参った。まさかこんな形で失恋が確定するだなんて思ってもみなかったから。
思い出したらまた少し気分が沈んだ。
そう、俺は柊子のことが好きだった。いや、好きだ。まだ現在進行形で。仮にひさぎと柊子が付き合っているとしても、この気持ちになんら変化は無いだろう。
いや、やっぱり変わるかもしれない。だから俺はひさぎから何も聞こうとしていないのだろう。望まない解答が得られるよりは、知らないでいるほうがまだマシだと、そう思うから。

食パンをコーヒーで流し込み、それから部屋を見渡した。なかなかの散らかり具合だ。
とりあえず午前中の予定が決まった。部屋を綺麗に掃除すれば気分も晴れる。
俺は立ち上がって、さっき閉めた窓をもう一度開けた。
涼やかな風に肌が心地よさを感じた。

土曜日。

飲み会はいつもどおり盛り上がった。そして問題は店を出てからだった。
「二次会どこ行くー?」
当然、二次会をどこにするかの話題になるのだが。
「つばきんちでいいじゃーん。」
ほらきた。いつも来るこの店は俺のアパートからかなり近い(おまけに結構俺の部屋は広い)。だからよく二次会の会場に俺の部屋が利用されてしまうのだ。
「よし決定ー。」
しかも俺の意思とは無関係に。まぁ、もう慣れたからいいけど。
一昨日部屋の掃除をしたのも半分はこれが理由だ。
やれやれだ。また隣の住人から文句言われるだろうな。
そう思いつつも断らない俺はやっぱりお人よしなんだろうか。



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