彼氏(仮)──疑問-5
「入れよ」
「結構です」
「わかってるよ。
人気がなくなったら、一緒に帰ろう?」
つまり、人目を避けるために、帰宅部が出払ってから部活組が下校するまでの間にある、あの時間帯に帰ろうと言うことか。
今朝のことがちゃんと活かされてて良かった良かった……
じゃなくてっ!
貴方の傘に入るのがイヤなんですっ!
「麻美が終わるの待ってるから、先に帰りなよ」
もしかして、私ってとっても酷い奴になってない?
ううん……ダメダメ。
昨年あんなに言っても聞かなかったんだから、少しは思い通りにいかない辛さを知った方がいい。
そうに決まってる。
……たぶん。
「じゃあ……帰るわ」
あれ?
やけに素直だな。
そう思った刹那、遼君は私に折り畳み傘を押し付けて早足にドアの向こうへ出た。
「待って!」
私の声に動きを止める遼君。
まだ雨に濡れるところまで出ていない。
「どういうこと?」
彼の行動が理解できない。
訳が解らない。
意味が解らない。