彼氏(仮)──疑問-2
「そんなことより、そろそろ行こうぜ」
遼君は時計に目を遣った後、私の手を引いた。
「ちょっ……ダメっ!」
私は嫌悪感を露にしてその手を振りほどいてしまった。
これにはちょっと顔色を窺わざるにはいられない。
傷付けてしまったかも……と、良心が傷んだから。
「良いじゃん、恋人なんだし」
子供かっ!
「あのね……風紀的に良くないし、目立つし」
もちろん、ただの言い訳。
でも、遼君はなんとか納得した様子だった。
案外聞き分けがいいみたい。
教室について、私は自席に座った。
朝から疲労困憊だ。
道すがら遼君は延々と何かを話しかけてきたけど、私は曖昧な相槌を打って、殆どを右から左へ聞き流していた。
明日は、バレないように別の出口から駅を出ようと心に決めた。
「奈々ぁ?」
「あ、麻美。おはよー」
「『おはよー』、じゃないわよ」
麻美は友だちの一人で、よく行動を共にしている。
その麻美が、いじらしく私の肩を肘でつついた。
「見たよ〜。奈々、河中君と一緒に来てたでしょ」
「まぁ、いろいろありまして……」
ホント、色々あった。