振り向けお前っ!14話〜揺らぐオモイ〜 -4
「少し遠いんだけど・・・・これは人が多くてごった返してるな。」
「ですね、はぐれないように気をつけないと。」
そう、愛華が言った時あることを思いついた。
一番離れにくい方法を、だけど、とてもやる気にはなれなかった。
「じゃあ、少しずつ間を通って進んでいこう。」
悠太が思いついたことそれは、互いの手を握り合う。
つまり、手を繋いで歩いていくということだった。
薫の時はあんまり抵抗はなかったが、今の状況ではものすごい抵抗がある。
そんなことを考えながらヒョイヒョイと、人の間を通り抜けていくと、愛華のことを忘れていた。
「あ!」
咄嗟に気づいて振り向くがもう、見えない。
「まずい、はぐれた、しかも自分から引き離した・・・・。」
戻って愛華を探そうと思ったがさすがに入れ違いになるとまずいので、少し待ってることにした。
すると、やっとの思いで抜けてきた愛華がこっちに向かって走ってくる。
「ご、ごめん、大丈夫だった?」
「え、えぇ、何とか。でも、すごいですね。あの中をするすると行っちゃうなんて。」
「あぁ、慣れてるからね。」
そして悠太はおもむろに手を差し出す。
さすがにまたはぐれるわけにはいかなかったから。
「え?」
そんな悠太の手をきょとんとして愛華が見ていた。
「とりあえず、はぐれるとまずいから手。」
「え・・・あ、は、はい。」
そうして手を繋ぎ合う。
悠太にとってはこれはある意味阿佐美に喧嘩を売りに行くより勇気がいる行動だった。
愛華も同じだろう、とてつもなく勇気がいるはずだろう。
「じゃあ、行こうか。」
とりあえず、微笑んだつもりでそう言った。無理やりな作り笑いだったと思う。
「は、はい。」
そして、その屋台の前まで2人はずっと手を繋いで歩いて行った。
「いらっしゃい、ぉ、今年は彼女連れかい?悠太君よ。」
「ちっ、違う!違う!友達だって。」
「なんだぁ、そんなきれいな子連れてくるからてっきりそう思っちまったじゃねえか。」
その瞬間愛華の顔が真っ赤になった。
「だからまだ友達だって!ああもう、焼きそば2つ。」
「はい、まいど。でまだってなんだ?」
「な、なんでもない!」
そう言い返しお金を払い、その屋台を後にする。