紙ヒコーキ-4
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私たちが今日の分の作業を終えて学校を出る頃には、陽もすっかり暮れていた。
「送って行くよ」
「えっ?いいよ!そんな、悪いし!」
「いーから。こんな時間に女の子一人で帰らせる方が危ないからさ。さっ行くぞ」
「うん!ありがとう!」
それから、いろんなコトを話しているうちにあっという間に家に着いてしまった。
「ありがとう。わざわざごめんね」
「気にすんなって。…あ!」
彼は紙の切れ端に何かを書いて私にくれた。
「よかったら今度電話して!じゃあおやすみ!」
そう言うと、笑顔で手を振りながら走って帰っていった。
紙には彼の携帯番号が書いてあった。
私はそれをぎゅっと握り締めて呟いた。
「期待しちゃうじゃんか…。…バカ」
そんな私の呟きは、夜の闇へと溶けていった…。
それから数日間、私たちは放課後に二人で教室に残って作業を続けた。
たくさん話して、今まで知らなかった彼の事を、たくさん知ることができた。
彼の誕生日、三つ年下の弟がいること、飼ってる犬、好きな音楽、好きな洋服…。
たくさん知って満たされていくハズなのに…。
こんなんじゃ足りなくて、彼の事がもっともっと知りたくなってしまう。
あたし…、欲張りなのかな?
そんなコトを考えてるうちに、プリント作業はとうとう終わってしまった。
(もう帰るのかなぁ…)
すると、彼が突然、
「余ったプリントでさ、紙ヒコーキ作んねぇ?」
と私に言った。
「へ?」
私は思わず目を丸くさせて、裏返った声で彼に聞き返してしまう。
「だからぁ、紙ヒコーキだって!作り方わかんないから教えてやるからさ。で、裏に願い事書いてから飛ばすの」
「…楽しそう♪」
もう帰るのかと思ってたから、彼の提案はカナリうれしかった。
「じゃあまず紙の裏に願い事書こー!」
私の願い事は…。考えなくても一つしかないよ。
(裕介と、ずっと一緒に居られますように…)
心の中でそう唱えながら、紙に書いた。