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赤ずきんちゃむ、おほかみの食糧につき
【ファンタジー 官能小説】

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赤ずきんちゃむ、おほかみの食糧につき-7

『わ、きれい』
チャムは目の前に広がる花畑に感嘆した。紫だけではなく、薄い黄色や桃色の花々が咲き乱れている。早速チャムが花を摘み始めた、その時だった。
『うっ!』
『!』
突然の呻き声にチャムが振り向くと、ジンロが腹を抱えて蹲っていた。
『お、狼さん!?』
『何てこたぁねー。持病の癪ってやつだ……』
チャムは不安げな表情でジンロの前に屈み込んだ。
『本当に? さっきの土だらけのお菓子があたったんじゃないかなぁ……』
『いや、大丈夫だ……だが、薬が』
『薬? 持ってないの?』
ジンロは弱弱しく頷いて言った。
『持ってねーが、すぐに作れる。さっきバター持ってたな?』
『う、うん。ちょっと土がついちゃってるけど』
『ヨモギと、木に巻きついてるアカカヅラの花びらにバターを混ぜ合わせりゃ、特効薬になるんだ……』
ジンロの言葉にチャムは頷くと、早速ヨモギとアカカヅラを探しに行った。
駆けていくチャムの後姿を見やり、ジンロはにやりと笑う。
無論持病の癪というのも特効薬というのもでたらめだ。
(素直すぎるのも、考えもんだな)
あまりの素直さというか騙されやすさにジンロは思わず苦笑した。
一方のチャムは、思ったよりも早く探しているものが見つかったらしい。何分もしないうちに緑のヨモギと赤い花びらを手にこちらへ向かってくるのが見えた。チャムからは見えないように、ジンロは懐から小瓶を取り出すと、それをぐっと呷った。
『取ってきたよ! これをすり潰して混ぜ合わせればいいの?』
チャムの言葉にジンロはこくこくと頷いた。
彼女はすぐさまバターの土を払い、バスケットに入れていたぶどう酒の瓶の底でヨモギとアカカヅラの花びらをすり潰し始めた。苦い匂いに僅かに顔を顰めるチャム。バターとそれを練り合わせ、彼女は嘘の特効薬をつくり上げた。
『これでいいんだよね? 飲める?』
ジンロは蹲ったままふるふると首を横に振る。そして、チャムと己の口を交互に指差した。
『え? く……口移し!?』
彼の意図することが分かり、チャムは顔を真っ赤に染めた。そんな初心な反応は、彼女に男性経験がないということを改めて感じさせる。
ジンロは顔を顰めて辛そうな表情をつくった。
『ううう……』
チャムは戸惑いながら人狼と薬とを見やった。
ついさっき会ったばかりの人狼へ口移しなんて。しかしこんな目の前で苦しまれたら、薬を飲ませないわけにはいかないだろう。せっかく薬をつくったということもある。
チャムは思い切って嘘の特効薬を口にした。
バターの味が強いせいか、思ったより苦くはなかった。チャムは苦しむジンロの口に、自分のそれを近づけていった。
『ん……』
舌に載せた薬を、舌を伸ばして人狼の口の中へ落とす。そうしたら、唇をはなせばいい――筈だった。
『んんっ!?』
伸ばした舌は、長いざらざらとしたジンロの舌に絡め取られる。嘘の特効薬の苦みが口内に広がった。しかし、同時に口内に広がるばらに似た甘い香り。
頭がくらくらするほどのそれに、チャムは唇を離せずにいた。

(さすが、高い金払っただけあるぜ)
強い香りはジンロが持っていた媚薬だ。口に含ませていた媚薬をチャムの口内に塗りつけた後も、ジンロはチャムの舌に己のそれを絡ませていた。人間同士のように口づけというわけにはいかないが、舌を絡ませ唇を貪ることはできる。
ジンロは舌を絡ませたまま、チャムの腰に手を回した。彼女は即効性の媚薬のせいか抵抗を見せない。むしろ積極的に舌を絡めてきていた。


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