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赤ずきんちゃむ、おほかみの食糧につき
【ファンタジー 官能小説】

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赤ずきんちゃむ、おほかみの食糧につき-1

乱れたシーツ。
脱ぎ捨てられた白いワンピースに、フリルの前掛け、赤いずきん。
少女はベッドに寝転んだまま、気だるそうにそれら自分の衣服を拾い上げた。
「もう一回」
そんな声と共に、首筋に手が伸びてくるのを少女は感じ、軽く身じろぎする。その手を振り払うが、声の主は諦めない。
「なー、もう一回」
「ジンロ」
少女は首だけを後ろに向けて、あからさまに嫌そうな顔をした。
ジンロと呼ばれた男――否、"男"と呼ぶには些か不都合のある、少女のパートナー"人狼のジンロ"は、彼女の細い身体を後ろから抱き竦めた。見た目よりもずっと柔らかな焦げ茶の体毛が、少女の素肌をくすぐる。
「やだっつっても、ヤっちゃうもんね」
ジンロは言って、彼女の秘所に手を伸ばす。
「だ、だめ!」
少女は顔を真っ赤にしながら、ジンロの腕から逃れるべく身を捩る。
「だめだめ、だめだったら! っていうか、何回すれば気が済むの!?」
顔を紅潮させる少女に、ジンロは低い声で笑った。
「さーな」
飄々と狼は言う。
「でも結局は拒めねーんだろ、赤ずきん」
「やんっ」
言葉と共に耳朶を噛まれ、少女は甲高い声を上げた。
それから少女は、きっとジンロを睨みつける。
「なあ、チャム」
言われて、少女――チャムは口を噤んだ。
「………」
そしてこくりと頷いて、
(ほんと、わたしってどうしてこう流されやすいんだろう)
ジンロのされるがままに、再び快楽の波へとさらわれて行くのだった。


1 配達屋とバスケット

「晴れた晴れた!」
青空の下。
白いワンピースと前掛けに赤ずきんを被り、チャムは大きく伸びをした。
彼女はこのオトギの国の配達屋。
オトギの国はそのほとんどが湖に覆われていて、いくつもの小島が浮かんでいる。その小島に人々は町や村などをつくり暮らしていた。
「あちゃー……昨日までひどい雨だったからなぁ。増水してる」
島同士は橋で繋がれていて、行き来はその橋を渡るか船のどちらかだ。
だから、人にしても物にしても、配達屋というものが人々の生活の中で重要な役割を担っている。
「こっちの橋はだめみたいね。今日は遠回りして行くしかないかな」
チャムは近所の菓子屋やベーカリーと提携している配達屋で、パートナーのジンロと共に菓子やパンなどを近隣の島まで配達、あるいは売りに行くことを生業としていた。
今も彼女は得意先の菓子屋へと、配達物を受取るために向かい、走っているところだ。

自慢の赤ずきんを手で直してから息を整え、チャムは菓子屋の扉を叩く。
「おはようございます。遅れてごめんなさい」
しばらくしてから妙齢の女がバスケットを片手に木の扉を開けてチャムを見やった。
「遅かったわね、赤ずきんちゃん」
「ごめんなさい、おはようございます」
チャムは苦笑して女主人に応える。
(もー、ジンロの奴!)
せっかく早起きしたつもりだったのに、と彼女は今朝のことを思い出した。


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