「望まぬ狂宴」-3
「君がどんなに淫乱かはよく分かりましたから、さっさと歩いて貰えませんかッ!」
あまりの言いように舞は言葉も出なかった。
「あ?ぁ、副官を怒らせてやんの」
「お嬢ちゃんも、副官におっぱいのひとつでも摘ませてやれよ」
「そうそう。そうしたら副官もちったぁ優しくしてくれるかもよ」
「違うだろ!キモチ良くしてくれるの間違いだろ!」
「イヒヒッ!そうだな!」
無遠慮な言葉に舞は肩を震わせるが、今は前の男に従い歩くしかない。
その後も、更にいくつか回廊を曲がり、階段を昇降して男はとある部屋の前で立ち止まった。
「こちらに御前がおられます。くれぐれも粗相のないように」
舞を睨みつけると怒ったように彼は言う。
この男が何故、こんなにも敵意を剥き出しにするのか舞には分からなかったが、兎に角その“ごぜん”とやらに会えば自分がどうしてこんな目に遭っているかが分かるような気がした。
「失礼いたします」
鎖を引く男に先導されて舞も部屋に入る。
そこには、気を失う前に見た狐顔の男がいた。
「気分はどうや?」
男の問いかけに舞はホッとして頷く。
しかし、その気持ちは直ぐに裏切られることとなる。
「何や残念やなぁ」
その表情が笑顔のままだったため、舞は一瞬、彼の発した言葉の意味が分からなかった。
「ま、ええわ。これからたっぷり可愛がってあげるき、退屈はさせんといてな」
彼はかじっていた林檎をプッと舞に吐きつける。
舞の谷間に挟まった欠片を拾い上げると、それを舞の口に押し当てた。
「食べ。服従の証に」
上から響くその声は拒絶など許しはしないような絶対者の言葉だった。
「何や、飲み込みの悪い子やなぁ。頭悪いんとちゃう?」
素直に口を開こうとしない舞に男は呟いた。
その言葉に、側に控えていた“副官”と呼ばれていた男が立ち上がる。
「ぅっ、ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ…」
その男に急に首の鎖を引かれて舞は咳込んだ。
更に開いた口に林檎の欠片を投げ込まれ、涙を浮かべて舞は転げ回る。
「いい眺めやな」
苦しむ舞の様子を眺め、御前とやらはうっとりとした表情を浮かべた。
「けど、まだまだ足りひんな。ヤツを苦しめるんには、これくらいじゃアカンき」
しばらく思案をしていた男は、舞の咳が落ち着く頃に顔を上げた。