距離〜千華から見た視点〜-2
剛は特別イケメンってわけではないけど、一重で切れ長の細い鋭い目、筋の通った鼻、長身・痩身・小顔っていうスタイルの良さで、ちょっと近よりがたい独特な雰囲気を醸し出して、密に人気があった。
顔が命のイケメン俳優ではなくて、雰囲気と演技力で魅せる実力派俳優って感じ。
おまけにその性格や趣味、強烈な個性が周りを引き寄せていた。
そのお陰で入学して間もない時間で友達は沢山出来てたし、それでも尚個性を失わず、寧ろ際立っていた剛は一際輝いて見えた。
この辺りから、私は焦り始めた。
今までは「同じ中学出身の友達」というだけでポジションは取れていたし、それが誇らしかったんだけれど、時間が経つに連れて私は「剛の多くの友人らの中の一人」に過ぎない、そんな感覚…。
この時、思った。
私は剛の特別な存在でありたい、と。
端的に言えば、自分が剛に恋をしているということに気付いたのだ。
ここからもう、私は必死。
住んでる場所も同じ地区だから、学校の後は積極的に誘って一緒に帰ったし、休みに二人だけで遊んだこともある。
調理実習で作ったお菓子や料理は勿論剛にあげたし、二人でテスト勉強もした。
とは言っても勉強等ただの口実でしかなく、ただひたすら剛との時間を過ごすため。
少しでも剛に振り向いて貰うため。
そのお陰なのか、周りからよく
「剛くんと付き合ってるの?」
「そんなに一緒にいれて羨ましいなぁ?」
なんて言われるようになった。
付き合ってはいなかったけどそう言われるのは嬉しかったし、周りより一歩以上剛に近い位置にいることも誇らしかった。