欲望の代償-4
最大の実力者・大沢は上海閥のコウタクミンと繋がりがある。岡は兄が中国でスーパーのチェーン店を大規模展開しており、北京閥、つまりコキントウ寄りともいわれる。鷲山も親中派である。これに対し、若手の枝川議員などはチベットやウイグルの人権弾圧問題を重視しており、中国共産党に批判的だった。
対中国への路線対立が抜き差しならなくなり、中国共産党の意を受けた左派が仕掛けた、それがあの偽メール事件だったと考える関係者は少なくない。じつは、あのメールの仲介者は鷲山だったのである。永井元議員をかばった前野は党首を追われ、左派が実験を握り、以後民生党は中国や北朝鮮に優しい政治スタンスに舵を切る。
さらに後日談がある。最近になってライブ社の堀井が永井元議員を訴えると言い始めた。もし法廷で争われることになれば、鷲山の名前が飛び出すことになりかねない。そこで先手を打った、そう疑う者は少なくないのだ。さらに永井元議員の死の真相を調べようとした週刊潮の記者が、福岡で消息をたったとの噂まで飛び込んできた。
「もうどこまでが真実かわからんな」
「でも大沢のときもそうでしたが、どうして民生党の党首の周りではよく人が死んだり、行方不明になるんでしょうねえ。あんまり俺たちを幸せにはしてくれそうもないな」
「党の内部でも岡とお遍路は少し距離を置き始めたようだな。資金的にも苦しいし、じつはいっぱいいっぱいなんだよな。だからテレビが必死に協力してる」
「もしかすると、今年の夏は熱くなるかもしれませんね」
窓の向こうには丸の内のビル街と戻り梅雨の雨空が広がっている。この国の本当の梅雨明けはまだまだ先だ。