距離〜佐山から見た視点 2〜-5
「剛くんは優し過ぎるっつーか、なんつーか。自分でも分かってる筈なのにさー。もう、千華ちゃんと別れてさっさと幸と付き合えばいいのだー。だって剛くんも幸が好きだから」
「ちょ…美沙…」
「だってそうだろー。お互い好き好き同士なら、問題無いのだー。それに…」
「……」
「千華ちゃんは幸から剛くんを盗ったのだ。私、あの子嫌い」
携帯灰皿で火を消ながら、言った。
今日の美沙は少し苛々してる。
「別に盗られたとかそんなんじゃないよ…。剛くんだって自分で考えて千華ちゃんと付き合い始めたわけだし。だからね、大丈夫だから」
最後のは嘘。
大丈夫なんかじゃない…。
「全くもって納得いかんよ、きみ。じゃぁさ、幸は剛くんのことどう思ってんのさ?」
「どうって、友達…。それ以上の…親友だよ…」
「………馬鹿者。目に涙溜めながらそんなこと言われても信じられますかって」
「…え?」
気付けば、私は涙目になっていた。
自分では気丈に振る舞ってたつもりなのに。
「ね、幸。私はそんな幸見てるのが辛いよ。私まで苦しくなる」
そう言って、2本目のタバコに火を着けた。
「ね。せめて私には、言って。溜め込むのは良くないし、私に言ったからってバチは当たらんよ」
「…うん…」
美沙の優しさもあって、私はついに涙を堪えきれなくなった。
泣きながら、言った。
「好き」