Double Lover(1)-4
―バタン
「あ?、おかえり?。」
『ただいまー。雨止んでたよー。明日は晴れっぽいしよかった……ね………って、はあ?!!?』
予想外の光景に、宝は思わず袋を落としてしまった。
『み、美烏ちゃん?!』
目の前にはさっきの大人しそうな可愛いらしい雰囲気とは違う美烏が、ビール片手にあぐらをかいて座っていた。
よく見ると、灰皿に宝が吸っていない見かけないタバコの吸い殻もある。
「はあ?何言ってんの?私は美久(ミク)だし。あ、知らないんだね。私ね二重人格なの。」
ボー然としている宝を気にもせず美久は続けた。
「あーちなみに、私は美烏の時の記憶が少しあるけど、美烏は私の時の記憶ないんだあ。」
そう言った美久の口元が、ニヤリと笑った。
『ちょ、どういうことだよ!美烏ちゃんでさえよくわかんねえのに!…み、美久ちゃんだっけ?とりあえず説明し…』
「汚い。触んな。」
宝が思わず肩に手を置いた瞬間、美久は思い切り宝を睨み付けた。
『あー、ごめん…なさい。』
「私は美烏と違って優しくもないし純粋じゃないし男嫌いだから。まあ宝は助けてくれたっぽいしいいや。あ、美久って呼び捨てでいいから。ちなみに私は二十歳。」
『あ、ああ…わかった。』
「私も詳しくはわかんないけど、美烏は頼りなさそうだし何か覚えてなさそうだし、私が覚えてるだけのこと全部話すわ。」
美久はそう言ってまだ頭の中の整理がつかないアホ面の俺にむかって、タバコの煙りを吹き掛けた。
俺、本当にやっかいな事に巻き込まれたかも…。
窓の外からポツポツと雨音がする。
また雨が降り出したようだった。
Double Lover(1)
-END-