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Double Lover
【コメディ 恋愛小説】

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Double Lover(1)-1

―ガタンガタン―

あー電車だりい。
近いからって電車にするんじゃなかったわ。
混んでるし車使えばよかった。

ちょうど今は仕事帰りの人間が多い。

俺の周りは疲れたサラリーマンやだるそうにしているOL。
目の前には周りよりも若そうで派手な格好の女が二人、周りの目も気なしず馬鹿でかい声で話している。
俺もだいぶ迷惑だし、周りも疲れているのもあるだろう、迷惑そうだ。

「えーまた宝(タカラ)って女の噂でてんの?」

「らしいよー。この前の打ち上げで女呼んだって週刊誌に書いてあったぁー。本当女たらしだよね!でも?宝ってさ、かっこいいから女が何人いてもおかしくないし許せるよねえ!」

「はははー!あんた馬鹿じゃん!って私も同じだけどー!なんでもありだよねっ!」

ただの週刊誌の[ガセ]だっつーの。勝手に言ってろ馬鹿。てか目の前に本人いるんだけど。


そう。
目の前の馬鹿女達が噂してるのは俺のコト。

俺は(自分で言っちゃうが)今人気で有名なバンドの「シークレット」のボーカル兼ギターの「宝(タカラ)」
撮影が終わって帰る途中だ。

今目の前にいるこうやって騒いでる奴が俺は大嫌いだ。

男のファンも多いが、ギター・ドラム・ベース、メンバーは皆イケメンだから(また自分で言っちゃうが)女のファンはもっと多い。

他のメンバーは女の子大好きだから嬉しいだろうが、かっこいいとか騒いでるくせに、本人が目の前にいても気づかないテレビの俺しか知らないような、ミーハーな奴に俺は興味ない。

どうせろくに曲とかも聴いたことないんだろ?
馬鹿馬鹿しい。



「次は〇〇?〇〇?」

俺はまだ騒いでいるうるさい女達をサングラス越しで思い切り睨みつけて、いつもの駅で降りた。




『うわー。雨降ってるし。』

地上に出てみると、さっきまで降ってなかったのにアホみたいなドシャ降り。

ここから家まで数分だが、こんな雨の中、走っても傘なしじゃベタベタになるのは目に見えている。

俺は諦めて、ドシャ降りの中とぼとぼ歩き出した。




―さみぃ。

やっと自分の住んでいるマンションが見えてきた時、何か違う物が視界に入った。

マンションの花壇の端でこんな雨の中、傘も差さず俯いて座っている女がいた。
ちょっと幽霊かとびびったが、真横を通り過ぎるのにシカトはできない。

『え…?何してんの?』

「わかりません…。」


え、わからないって何?
てか、え?ちょっと可愛…

大きくてクリクリな目で俺を見上げ、今にも泣きそうな困った顔をしている。
なんか捨て猫みてぇ。


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