Double Lover(1)-2
―どうしよう。
女だし家に入れるのは、さすがにまずいよな。
………でも、うん。
こんなベタベタだと風邪引くし、ほっとけないよね?。
べつに名前も知らない女なんかと、変なことなんてあるわけないし!
うん、ほっとけない!
ほっとけないからそうしよう。
自分で勝手に解釈して、一か八か誘ってみた。
『う゛ん…まあ詳しい話はあとで教えてくれればいいから、用事ないなら俺んち上がる?一人暮らしだから誰もいねえし。』
頬を赤く染め、綺麗な黒髪を拭きながら彼女がリビングに歩いてきた。
「…お風呂ありがとうございました。すいません、服の洗濯まで。」
そんなかわいらしい女の子が、素直に男の家に上がっちゃっていいんすか。
お風呂なんて入って。
しかも明るいとこで改めて見ると、めっちゃ可愛いし!
俺の服着てると、ちっちゃさがもっと目立ってやべえ。
俺、とりあえず落ち着こう。
タバコに火をつけて、彼女が近くにくるのを待った。
『気にしなくていいよ。あ、コーヒー飲む?』
「あ、いただきます。」
コトンッ
『……どうぞ。』
「すみません……。」
『…………。』
「…………。」
静かな空気の中、タバコの煙りだけが漂っている。
………なんだこの沈黙。
自己紹介とか説明とか、さっきの状態の説明とか行き先とかなんかないわけ?!
『ふぅー。とりあえず俺は宝。あんたの名前は?』
この空気に耐え切れず俺は口を開いた。
「…た…ぶん…美烏(ミオ)…です。」
『た、多分?どういうこと?』
「わかんないんです!名前とか何でさっきあそこにいたのかも、全部覚えてないんです!それでお風呂入る前に鞄の中見たら、保険証が入ってて名前が書いてあって…。」
はあ!?まじかよ…。
美烏は目に涙を浮かべ今にも泣きそうだ。
とりあえず美鳥は何もかも分からないまま、あそこにいたらしい。
あーなんかやっかいな事に巻き込まれそうな気が…。
あ、待てよ…。