『群青の街・第一話殺し屋ハルと少女リリア』-5
しかし変に肌寒い。
なんだろう、この悪寒は。
近くにあったカーディガンを羽織り、恐る恐る部屋を出た。
夜は出歩いてはいけない、と父から言いつけられているが、何故だか不安で仕方ない。
父親か母親か、誰かの姿を確認したかった。
自分一人だけが、世界に取り残されたような感覚は、
きっと何かの勘違いだと、
安心したかった。
しばらく歩いた。
父の仕事部屋から、小さな明かりが漏れていた。
なぜドアが少し開いているのだろう?
不思議だった。
でも、父親がまだ起きている、
そのことに安心して、
小走りで部屋に向かってドアを開けた。
「父様!」
目に飛び込んで来た光景は、自分の期待しているものではなく、異常だった。
父は椅子に深く座り、うなだれていた。
まるで身体全ての筋肉を失っているように、ダランとした座り方だった。
胸に小さな穴が空いていた。
赤黒い液体が、父の左胸の穴から下に一直線に、ただ流れていた。