あたしのくまさん-1
それは夏の終わりのこと。
体育の授業が終わり更衣室で着替えて、更衣室をでた瞬間。
『あっ!!!!』
という男子の声と共にあたしの顔めがけ、バレーボールが飛んできた。
あたしは反射的に腕で顔を守った。顔の代わりに腕に痛みが走った。
『ー…!!!!夏奈大丈夫!?』
そこにいた友達の１人、武田結城（たけだゆうき）があたしによってきた。
心配しないわけがない。ここの学校はバレー、バスケなどの球技を始め、部活動が盛んである。
男女バレー部は県でも首位を争うほど強い。男子バレー部はこの前あった県高総体で優勝し、東北大会で見事準優勝して帰ってきた。
その男子バレー部のアタッカーが打ったバレーボールが腕にあたったのだ。
『大丈夫か!!』
打った人や周りにいた人が集まってきた。
『平気?!!!!腕も動くし!!』
みんなの前で腕を動かすと、心配そうながらも安心したようだった。
『でも一応保健室行ってくるね。膝すりむいちゃった（汗）』
といって友達をさきに教室にいかせて保健室の道のりを歩きだした。
『痛い…。』
ぼそっとつぶやいた。実はあのとき受けた衝撃を和らげようと後ろに下がったときに軽く足を捻ってしまった。
そのうえ、
『手首捻ったかな…。』
手首を捻ったような感じがする。おまけに腫れてきた。
『もういや…。』
はぁ…と溜め息をつき、
『このまま授業ふけようかな…。』
などといろいろ考えていたら、
『佐波っ……!!!!』と後ろから声がしたと思ったら腕を捕まれた。
『痛っ……。』
『やっぱ怪我してんじゃん。』
狙ったかのように痛い方の手を引っ張って、あたしの動きを止めたこいつ。
クラスは一緒でも１、２を争うくらいにしゃべったことない人というイメージの塊。唯一のイメージも…くまさんのようにでかいということだけ（１９０くらいらしい。）そのこいつは…
『なにすんのよ…熊倉…くん。』
まともに名前もよんだことがないのでつい、『くん』をつけてしまった。しかもワンテンポ遅れて。
バカだあたしー…。という頭と気まずい沈黙。
気まずい沈黙を破ったのは熊倉くんだった。
『…熊倉でいいよ…。くんは好かない…。…まず、保健室だろ。』
といってあたしをおんぶした。
『あっ、あたし重いから!!おろしてっ!!』
じたばたもがいていると冷静な熊倉の声。
『うるさい怪我人。』
『はぁ!?一応歩けるし。おろして!!』
この一言であたしはちょっとムカっときた。
少しはいいやつなのかなぁと思ったあたしがバカだった…。
『…ごめん。言い過ぎた…かも。』
後ろからでも分かるくらい耳が赤く、これは…
『照れてる…??』
『う、うるせぇ。黙れ…』
あたしはこのとき初めて気づいた。
熊倉は照れ屋なのだ。ぶっきらぼうなだけだ。
きっと…根はいいやつなのだろう。
『ふふふふ…。』
つい口から笑いが零れた。
『きも。』
『ひどっ!!』
こんな会話をしていたら保健室についた。