憂と聖と過去と未来 6-8
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帰宅途中、いろいろなことを考えた。
大半は今までの苦しみだったが、憂との大学生活も思い浮かべていた。
段々とマンションが見えてくる。
家に帰ったら、真っ先に憂に会いに行こう。
そして…
「聖くん」
「……!?」
暗がりの向こうに聞き慣れた声が聞こえた。
たまに耳にするひどく冷たい声だ。
ジャリ、とアスファルトを蹴る音が聞こえたと思った瞬間、その姿を確認した。
紛れもなく佐山だ。
「…っ」
その手に握られていたのは…刃物だった。
いくらなんでも恐怖を覚える。
包丁なのか…ナイフなのか…
そうか、タクシーか何かで先回りしたんだな。
さっきの、殺す、という言葉は憂に対してではなく俺だったのか。
混乱した頭からは瞬時にいろいろな考えが出てくる。
そんな間も佐山は走って向かってくる。
とにかく回避しなくてはいけない。
憂が待っているんだ。
「聖くん、愛してるよ」
「!」
目前でそう呟いた佐山は泣いていた。
その泣き顔を…
つい俺は凝視してしまった…
「……」
かわしたのか…?
佐山は後ろで派手な音を立てて転んだ。
「……!!」
熱い。
腹部がドクンドクンと脈打つ。
とっさに腹に手をやり確認する。