憂と聖と過去と未来 5-1
目の前には懐かしい光景が広がっていた。
憂の部屋で、俺達はいつものように遊んでいる。
今日はお医者さんごっこらしい。
最近、憂がはまっている遊びだ。
俺の体は小さいけど、思考は今の俺と小さい頃の俺が共有しあっているらしい。
これは夢か。
そう自分で納得して、この世界を引き続き傍観することにした。
目の前の憂は、せんせえ、かるてをもってきました、なんて言っている。
俺が医者で憂は看護士らしい。
小さい憂は、愛らしくてとても可愛い。
…まあ、今も可愛いんだけどな…
すると、頭の中でけたたましい音楽が鳴りだした。
なんだこれ…
ああ、携帯が鳴っているのか。
そこで夢が終わり、俺がベッドの上にいることに気付く。
起き上がって枕元に置いてある携帯をゆっくり開くと、ディスプレイには憂の一文字が踊っていた。
じゃますんなよな、憂。
『………どうした』
『あ…ごめん、寝てた?』
さすが憂、気付いたか。
まあ、俺が明らかに寝ぼけたような声を出してしまったのだが。
だが、俺だって長年の付き合いで感は鋭くなったと思う。
憂の声が、心なしか暗い。
『…憂、なにかあったか?』
『…え?』
激しく動揺する憂。
『なにかあっただろ?』
気になって問い詰めてみたが、憂はその問いに答えることはなかった。
そのくせ、要件はなにもないと言いやがった。
「……」
電話を切った後、少しだけ考えてみる。
クラスが別々になったから…
真っ先にこれが浮かんだが、おそらく違うと思う。
俺は一つ首を傾げて、再びベッドに身を預けた。