プラトニックラブ3-3
「さんきゅ」
今にも不平を言いだしそうな目で俺を見ながら彼女はコーヒー飲んだ。
セミロングでゆるく巻かれている髪を耳にかけ、彼女は一息つき俺に向かって言った。
「貴方ね、こんなことされたらビックリするでしょ。」
俺は頬杖をついて彼女を見る。
「ハルでいいよ」
彼女は開きかけた口を閉じ、俺から目を反らした。
顔が少し赤くなっているのがわかる。
「隣座らないの?」
俺は目の前にある角砂糖を2つ取り、カプチーノの中に入れた。
「学校の人に見られたら厄介でしょ」
口ごもった感じで彼女が言った。
俺はカプチーノを一口飲んだ。
苦みが口の中に広がる。
「別に。気にならないよ」
そう言って砂糖をもう一粒手にとった。
「入れすぎよ。砂糖」
彼女はハッとして「つい…」と小さく言った。
「甘党なんだよ。今度はケーキも奢ってね」
3つ目の砂糖をカップに落とし、軽くかき混ぜた。
彼女は呆れたように笑ってコーヒーを飲んだ。
随分甘くなったカプチーノを飲みながら 俺は彼女を見た。
先日、エレベーターの中で彼女と一緒になり話すようになった。
というより、俺が一方的に彼女に話しかけている。
名前は確か桜田瑠美。
年は23?25歳くらいだろうか。
落ち着いたメイクに綺麗に手入れされた髪、スーツも決まっている。
見るからにキャリアウーマンって感じだ。
シャープな顔立ちで目尻が少しだけ下がっているせいか優しい印象を持つが、彼女のしゃべり方や態度でどことなく厳しいイメージもあると思った。
兎に角、あんな高級マンションに住まない限り、出会う接点がないようなタイプだ。