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缶コーヒー
【青春 恋愛小説】

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缶コーヒー-3



「意味わかんねぇ。なんでだよ。見逃したお前も共犯者だぞそりゃ。」
「だって、なんか急でビックリしてたし。自分でもわかんないよ。なんか、なんか言えなかった。」
「ホント意味わかんねぇ。」
「私だって自分で自分が意味わかんないよ・・・。」
学校の帰りに拓ちゃんの部屋に直行して、今日の出来事を知らせた。
「あぁ、ごめん。ちょっとキツく言い過ぎた。まぁ、しょうがねぇーから早く忘れな。」
「うん。」
「美紀。今日は学校行って偉かったな。」
「うん。まぁね。」
「美紀が来ねぇと俺もノンビリできるよ。」
「悪かったね。邪魔でさ。」
「ホントだよ。お前がいちゃ、彼女も呼べねーよ。」
「えっ!拓ちゃん、彼女いるの?っていうか私は何?」
「いねぇーけど今は。でも好きな人が出来たんだよ最近。私は何って・・・お前はただの妹みたいなもんだろ。」

―― 妹かよ! ――

「なんだよ、拓ちゃん。好きな人できたんなら早く教えてよ。どんな人。バイトの子?幾つ?かわいい?」
やけっぱちで聞く。
「つーか、美紀には関係ないだろう?」
「なんで?関係あるよ。何でもいつも話してくれてたじゃん。」
「あぁ、なんかそういうのウザイ。友達だから、親友だから、家族同然だから、何でも話してね。話すのが当たり前でしょ?みたいなの。」
「拓ちゃん?なんで急に?」
「お前もさ、成長しろよ。いつまでも居心地いいからってここに来るな。父さん死んで母さんもいなくなってかわいそうだとは思うよ。けどさ、いつまでもかわいそうモードに入ってたら何年たっても先進めないだろ。」
「別に私、かわいそうモードなんて入ってないよ。自分かわいそうって思ったこと一度もないし。」
「本当にか?俺にはそう見えたけどな。親父さん死んでからずっと。私かわいそうな子なのよ、皆優しくしてねってさ。」
「そこまで言われたくないんだけど。っていうか何でそこまで言われなきゃなんないの?学校辞めた拓ちゃんと友達でいてあげたのは私だけだよ。」
「そういうのがウザいんだよ。恩着せがましいんだよ、お前は。高校辞めたからって俺の人生そこで止まるわけじゃねーし、新しい友達だって出来るんだよ。お前は楽しかった高校時代にいつまでもしがみついていたくって、新しい環境が嫌で俺のとこ来てるだけなんだよ。でもさ、高校辞めた俺にいつまでもそういうの求められても辛いんだよ。」
「そんなんじゃない。私はただ拓ちゃんに会いたくて・・・。」
「俺を逃げ場にするな。少しお互い離れてみてさ。お互いもうちょっと大人になったらまた遊ぼうぜ。いつまでも子供の頃と同じ関係ではいられないんだよ。美紀にもわかってるんだろ。」
かなりひどいことを言われたのに最後は妙に優しくて、それに拓ちゃんの言ってることは当たっていたから私は余計何も言えなくて、ただ拓ちゃんの部屋から飛び出して、自分の家に帰った。

 いつもそばで同じ道を歩いてると思っていた。でも、いつまでも一緒っていうわけにはいかないのもよくよくわかってた。ただ、なにも今日言わなくたっていいじゃない。わたし本当に一人ぼっちになってしまう。
拓ちゃんは何もわかってないよ。俺だけは傍にいるよってどこにも行かないよって、ただ一人、世界で一人、拓ちゃん、あなたがそう言ってくれるのなら私、お父さんも、お母さんもいなくったって平気なのに。拓ちゃんとも誰とも通じ合うことが出来ない。
結局、私。ひとりぼっち。


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