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『六月の或る日に。』
【悲恋 恋愛小説】

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『六月の或る日に。2』-7

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「ねえ、ずっと聞きたかったんだ。」

あたしたちは大学を出て、ある場所へと向かっていた。夏樹は「ん?」とあたしの方へ顔を向けた。

「あの舞台の時…、あたしに告白すること、前から決めてたの?」

「あー…、あれか。」

夏樹は気恥ずかしそうに、そっぽを向いた。何だか、自分まで少しくすぐったい気持ちになった。

「あれは…、別に明確に決めてたってわけじゃねえんだけど…。まぁ、告白したい、とは思ってた。」

初めて聞く、あの時の夏樹の気持ち。

「でもまぁ勢い?みたいな感じだったかな。あ、いや、お前を好きっつーのは本気だったぜ?」

わかってるよ、と苦笑しながら答えた。
『本気だった』もう過去形になっている言葉に、また寂しさがあたしを襲った。

「………今だから言うけどさ。」

すると夏樹は、少し慎重な感じでまた何か話し始めた。


「春美、すげーモテてたんだよ。」

「え?」

「俺のダチとかも、お前のこと可愛いとか綺麗だとかうっさくてさ。授業中もお前の事チラチラ見てるヤツいたし。」

「はぁ?」

夏樹の勘違いなんじゃないの?

そう思った。だってあたしはそんな風に感じたこと一度もない。

「これだよ…。」

すると夏樹は呆れ顔でそう呟いた。

「お前ほんっと!そうゆうの自覚ねーのな。」

「そうゆうのってなによ?」

「だーかーら!誰かに好かれてるとかモテてるとかゆう自覚。」

「自覚って…。そんなのわかんなくない?」

「いや、わかるだろ。」

夏樹はスパッと、そう言い切った。
あたしはただ、首を傾げるばかりだった。


「……サークル内にも、お前のこと好きって人もいたし。」

「ええっ!?」

夏樹の話に驚きすぎて、思わず叫んだ。

「う、嘘でしょ…?」

有り得ない。絶対有り得ない。

そうとしか思えない。

「嘘じゃねえよ。俺、実際にそう言われたんだから。」

夏樹はそんなあたしに、不機嫌そうに顔をしかめた。

でも本当だとしたら、一体誰…?

あの頃は、そんなこと思いも寄らなかったし、気づきもしなかった。


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