REALOVE−リア・ラブ−-2
ここまでくると龍音の中のケモノも次第に消え,跡に残るのは後悔と、こみあげる奇妙な感情ばかり。
「・・・悪ぃ・・・」
そう言って,軽くおでこにキスを落とすと,陽芽は押さえつけた口から悩ましいため息を漏らした。
「ん?」
「ゃく・・・早く,イカせて・・・ください・・・」
その言葉に,龍音はようやく自分と陽芽の下半身が繋がっていることを思い出す。涙はそのためか,と思うと,心が少し温かくなって,思わず吹き出してしまった。
「・・・何よぉ・・・?」
「や,ごめん。んじゃ,鳴かせた分優しくイカせてやるよ,お姫様♪」
そう言うと,龍音は急激に陽芽の子宮を突き上げてきた。ぐんっ,という音と共に,ガツガツと良いところを突かれ,陽芽は激しく狂い鳴く。
「んっああん!やぁん,ダメっダメぇ!!」
「何がダメ?」
「イキそで・・・体がおかしいのおっ!!」
「うれしい言葉だね(笑)」
優しくするって言ったくせに・・・と,陽芽は心の中で毒を吐く。そして最後に龍音が大きく腰を動かすと,陽芽の頭の中で光がはじけた。
「んっやあああっ!!!!龍音ぇぇぇっっっ!!!!」
・・・陽芽がイった直後に龍音も絶頂を迎え,行為を終えて龍音は陽芽の腹の上に放出した白濁した液体をティッシュで拭い取っていた。
「今日は?こっちで寝る?」
いささか元気のない声で龍音が尋ねると,陽芽は力無く首を横に振った。
「今日は・・・自分の部屋で寝る・・・」
「っそ・・・」
数分後,衣服を着終えて部屋を出て行く陽芽を見送った後,龍音は1人ベッドの縁に腰掛けてうなだれていた。
「何・・・この独占欲??」
ホストという職業上,女をとっかえひっかえしてきた龍音にとって,今まで感じたことのない感情。先ほど感じたそれに、龍音は未だなお頭を抱えていた。陽芽を見ていると、胸が苦しくなる。うまく表現できないが、守ってやりたいような、まるで壊れ物を扱っているかのような、そんな気持ち。かつて職場の上司に教えられた、この職業とは無縁な感情―――驚くほどに、全てが一致する。
――愛しい。好きだと思うこと―――
「好き・・・なのか・・・俺がぁ!?」
かつての自分からは考えられない思いに、1人苦悶する龍音だった。
翌日。いつもどおり2人より一足先に学校に着いた陽芽は(涼平と龍音の人気があまりにすごいため、一緒に登校すると必ずと言っていいほど人の波に呑まれて遅刻するから)、自分の机に向かうなりそのままふらふらと突っ伏した。
「くぅわぁぁぁ〜・・・」
意味不明な声をあげてぐだら〜っとタレる陽芽。そんな陽芽を一部始終見やっていた隣の席の呉松貴斗(くれまつ たかと)が心配しつつも苦笑する。
「うっわ・・・陽芽ぇ、すっごい死相出てる・・・」
「ホントぉ〜?あ、ホントだぁ〜・・・えへへ・・・」
こりゃだいぶキてるな、と1人心の中で納得する貴斗。彼は陽芽のご近所さんで、小学校から一緒という生粋の幼なじみである。とはいえ、それほどのつきあいでありながらも、陽芽が毎晩のように龍音と体を交えているということを貴斗は知らない。ホストの居候がやって来たというところまでは話したが、それ以上のことはいっさい伝えていないのだ。だが貴斗の方も、自分は陽芽の幼なじみだからと、根拠のない自信で言わなくてもわかったつもりになっているのだから、まあこれはこれで良しとしよう。
そんなわけなので、陽芽がこんなに疲労しているのを、貴斗は「2人の居候を養っているので家事などで疲れているのだろう」と勝手に解釈しているわけである。
「何、やっぱ1人で2人養うのって大変なの?」
「も、すっごい大変・・・」
特に片割れの方がね、と陽芽は心の中で付け足した。できることなら、全てを貴斗に言ってすっきりしたい。だけど、そんなことを言ったら明日から引きこもりになってしまうだろう。
「でも心配だな・・・」
「?何が?」
「その居候さ・・・男なんだろ?2人とも」
「うん。さすがに元ホストだけあって、結構イイ顔してる・・・」
「心配だよ」
今ひとつ、貴斗の言葉の意味が理解できない。何が心配だというのか?貴斗は何を考えているのだろう?
「だから何が・・・」
「俺さ!好きなんだ・・・」
突然叫ばれて、陽芽は肩をすくめたまま「はぁ・・・」ととんちんかんな声を出してしまう。数秒後、言葉の指すモノをのみこんで、今度は陽芽が叫び声をあげた。
「はぁっ!?」
「だから・・・俺、結構前から陽芽のこと好きで・・・」
史上最大の恋愛戦争、本日幕開け。。。