遠恋ーえんれんー泪side2-1
あの電話から2週間。
何度も電話をかけなおそうと思った。
何度も謝ろうと思った。
けど今の僕じゃきっと駄目だ。
また心にもないこと言って傷付けて泣かせて泣いて。
結果が目に見えてる。
「みーねー‥好きだよぉー‥ごめんねぇー‥ぐすっ‥」
情けない。
21歳の男が好きな女の子の為にグスグス泣いてる様は本当に情けない。
泣き虫だからしかたがないと、自分を慰める。
「はぁ‥行かなきゃ‥」
今日は老人ホームで、琉球舞踊を披露する日。
おじいちゃんおばあちゃん達はホントに優しくて。
僕は老人ホームで踊るのが1番好きだ。
「ひっどい顔‥」
泣き続けたせいで、目は腫れてるし鼻は真っ赤になってる。
なるべく人には会いたくないけど、今日は行かなきゃ。
仲の良いおばあちゃんが僕を待っててくれてる。
老人ホームにいるおばあちゃん。歌樹(うたき)ちゃん。
85歳のおばあちゃんをちゃん付けで呼ぶのはどうかと言われそうだけど、とっても可愛い人なんだ。
歌樹って名前は、琉球の信仰における聖域の総称である御嶽(うたき)から付けられたのよって誇らしげに話す歌樹ちゃんはホントに可愛い。
「さて‥行きますか。頑張れ、僕。お願いだからこれ以上泣かないでくれよ。」
気合いを入れてアパートの部屋を出ようとした。
そうそう。
沖縄に来るにあたって初めて知ったのは、沖縄にもアパートやマンションがあるってこと。
僕がバカなだけかもしれないけど、沖縄にはそんなものがないと思い込んでいた。
なかったら困るんだけどね。
「‥今日はお留守番してて。」
そう言って、左手中指の指輪を外した。
コレを見ると舞踊の最中に泣いてしまうかもしれないから。
コトン‥と小さな音をたてて、指輪が下駄箱の上に置かれる。
「‥行ってきます。」
そう小さく呟くと、勢いよくドアを開けて部屋を出る。
舞踊の衣装や小道具を持って歩いてるので、半端なく重い。