光の風 〈占者篇〉-5
「カルサ、とりあえず圭を送ってくるよ。」
一旦話の区切りを付けるように貴未が声を出した。意図したように皆の気持ちが切り替わる。視線の先は圭に集中した。
「そうだな、頼む。」
カルサは答えると、圭に近付くため足を進めた。カルサの言葉を受けて貴未は圭の横に行き、手を差し出す。すると圭は首を横に振り微笑んだ。
貴未の手が下がる。
「ここに残ります。」
今度はカルサの方を向き、また同じように微笑んだ。そしてもう一度貴未へ視線を戻す。カルサも貴未も、ただ黙って圭の動きを見ていた。
「貴未さんと、マチェリラ。二人が迎えにきた時から決めていました。」
名前を呼ぶ時は本人と目が合うように、話かけるようにゆっくりと言葉を綴った。
「ここで私と皆さんの道が繋がったのも運命です。運命ならば導かれるままに。」
言葉の1つ1つを大切に丁寧に口にしていく。その話し方は圭のものだった。シャーレスタンはどちらかといえば流れるように滑らかに話していたと、ぼんやり記憶を呼び起こす者もいた。
「その運命は誰かの都合がいいように作られたものでもか?」
責任を感じているのだろう、カルサはいつもこの話になると苦しそうな表情をする。それに気付いた圭は思った事をそのまま口にした。
「責任を感じているの?」
カルサは目を伏せ、感じない筈がないと小さく答えた。
「でもカルサトルナスは何も悪くないわ。何故そう思うの?」
「シャーレスタンまで巻き込んでしまった。」
カルサの目が圭を捕える。圭はすぐに応えず、カルサの言葉を受けたまま黙っていた。目と目だけで会話をしているようにも、探り合っているようにも見える。
「カルサトルナス、皇子としての力は持ったまま?」
二人の会話に反応しながらも周りは黙って見守っていた。カルサが肯定の意味をこめて首を縦に振った瞬間もそれは変わらない。
ここを期に場の雰囲気が一変することも感じていながら黙って見ていた。そしてきっかけとなる圭の言葉が出される。
「さっき言った事も本気の言葉?だとしたら、それは違うわ。貴方の慢りよ。」
決して声をはった訳でもなく、投げ付けている訳でもないのに、その言葉は強くカルサをひきつけた。
「カルサトルナス、貴方に憐れと嘆かれるほど私達は落ちてはいない。あの子達を止められなかったのは私達も同じ、何故子供の貴方がそこまで背負う必要があるの?」
「今の世界のこれからを全てオレが担っている。過去を清算し終わらせなければ何も生まれない。」
「その過去には私達も含まれている筈よ。」
穏やかな口調ながらも強く主張をした。お互いの視線がぶつかり合ったまま何も続かず、カルサには言葉もないように見えた。言葉に詰まっていると言った方が正しいのかもしれない。
それでもカルサの言葉を誰もが待っていた。カルサにもそれは伝わっていた。
カルサの中で様々な思いが駆け巡る。今まで抱えてきたものや、両手からこぼれ落ちてしまったもの。目の前にあるものをまだ掴まなければいけない。