エリザベス・悲劇の人形たちZ-1
北の魔界から戻って来たグロリアスはすぐに、エリザベスとキディを檻から解放した。
自由になった2体は一風呂浴びて、タップリと食事を取った。
驚いたのは、エリザベスがずっと抱いているキディが、キレイな体に戻っている事だ。
これは不思議である。
「母乳だわ」
エリザベスのダミーに扮してくれていた人形のルーシーが状況を理解した。
「母乳って? あの自惚れ人形から母乳が出ているの?」
軽く食事を済ませた後、エリザベスママのオッパイをチューチュー吸い始めたキディを見て、ルーシーは説明する。
「だからキディは、美味しそうな表情をしているでしょう? あれは、ママのお乳を飲んでいるって顔だわ」
「母乳と、体がキレイななった事と何か関係あるの?」
「人形の母親から出るお乳には、子供人形の病気やキズを治したりする成分が含まれているの。
ずっと母乳を飲み続けた事によって、キディの体がキレイになった言うワケ」
「へえそうなんだ。
でもどうして、母乳が出るんだろう?」
「私自身も分かんない」
人形や他の生き物では有り得ない事だけど…
人形の世界ではよく、起こっている現象だと言う。
「不思議ネェ」とグロリアス。
一息付いて人形部屋に戻ったエリザベスは大きく背伸びした。
久しぶりの我が部屋に、安堵のため息が出る。
それにしても、部屋の中がやけに静かな事。
そう言えば…
「子供タチ、イナイ」
辺りを見回して、エリザベスは他の子供人形たちがいない事に気付く。
「子供人形たちなら」
グロリアスは事情を説明すると、エリザベスは急に元気になった。
「私ガ、夢ノ人形王国ノ女王二ナル。嬉シイ」
「名誉な事ね? 女王様になれるなんて」
「当然ノ事」
「エ?」
「ヨク聞キナサイ。私ハ、気品溢レル高級人形」
相手の言葉を遮るようにして、グロリアスはニッコリと微笑みながら言葉を並べる。
「貴女は尊い御方ですね? エリザベーラ女王」
「ソウ、私ハ…女王エリザベーラ」
胸を張り、堂々とした態度でエリザベス…もとい…エリザベーラはソファに腰掛けた。