エリザベス・悲劇の人形たちZ-3
「シェリー姉さん」
しばし、グロリアスを見つめたシェリー。
ジッと北の大空を見つめ始める。
「先に行った子供人形たちと、あの親子に待っているのは…闇の世界での苦しみみたいね」
再び北の大空を見つめるグロリアス。
「しかも、永久に終わりの無い苦しみ。一度入ってしまえば、そこからは二度と抜け出せない」
「目的は達成したの?」
「目的って?」
「人形たちに対する今回のアンタの行動は、お姉さんの仕返しだけが理由じゃない。そうよね?」
「うん…まあ」
「その、もう1つの理由が知りたいわね」
「えっと…」
シェリーからの質問に、グロリアスはエリザベスとの過去の経緯を話し聞かせた。
高校生の頃だった。
グロリアスは友達とよく、近所にある人形専門の孤児院に行ってボランティアをやっていた。
施設の仕事を手伝う傍ら、子供人形たちと遊んだりしていたのだ。
無邪気な子供人形と楽しく接して、グロリアスたちは充実した日々を過ごしていた。
そんな時、等身大の1体の女性人形が孤児院へ連れて来られた。
その人形はエリザベスだった。
身よりがなく、街でさ迷っているところを警察に保護されたらしい。
住む所も無いって言う理由からエリザベスは、孤児院で暮らす事になった。
だが…
「あんな人形なんか、孤児院に入れるべきじゃなかった」と、後になって誰もが後悔した。
エリザベスの孤児院内でのワガママぶりに、手を焼いたのである。
子供人形たちと仲良くしようとしなかった事も問題視された。
エリザベスは元女王様ぶりを発揮したのだ。
子供人形たちはエリザベスに甘えたり、接して来たりしたけれど…
エリザベスの方が敬遠していた。
無視や、虐待行為を繰り返したのだった。
そして最後には、子供人形たちを1体残らず踏み殺して施設から逃亡してしまった。