傾城のごとく〜a Children's story〜-4
「これで、さいごだね」
ずいぶんと時間がたち、おばあさんのまえには1ぴきだけがのこっていました。
白、黒、茶色の三毛猫です。
でも、そのせなかには、ほとんど毛はのこっていません。
「おまえ。とりわけ、寒かったろうねえ」
おばあさんは、ねんいりに服をあみます。もともとあった三つの毛色にあんでやりました。
「さあ、できあがったよ」
できあがった服は、三毛猫のからだを包むようになっていました。
服を着せてもらい、三毛猫はよろこんでいます。
その時です。明るかった広場が、まぶしくかがやきだしたのです。
「こりゃ、いったい」
おばあさんは、光の中でかがやく猫たちを見ておどろきました。
さっきまで着ていた服が、消えてなくなっています。
かわりに、きずあとになっていたところに、キレイに毛がそろっていたのです。
「おまえたち。やっぱりそうだったのかい」
おばあさんには、なんとなくわかっていました。
「おまえたち、人間に殺されたんだねえ」
そうです。集まった猫たちは、交通じこやいじめられて死んでしまった猫でした。
「そのきず。それだけのけがをすりゃあ、助からないよねえ」
猫たちは、おばあさんにおじぎをすると、ゆっくりとからだが浮き上がり、空高くに飛んでいきました。
おばあさんはその様子を見て、悲しく、嬉しく思いました。
「ようやく成仏できたんだねえ」
でも、広場の光はまぶしいままです。
すると、広場のむこうから、また、きずあとのある猫がたくさん集まってきました。
猫たちは、おばあさんのまわりに集まると、大事そうにかかえた毛糸の玉を見せました。
「あんたたち、そんなに」
おばあさんはポロポロと涙を流して猫たちに話かけます。
「いいよ。あんたたちが成仏できるまで、あんであげるよ」
おばあさんの心には、悲しい思いがありました。
「わたしにはね。もう、あたたかい家族なんてないんだ。いいよ。これからは、あんたたちといっしょだよ」
その時です。おばあさんのそばに座っていたミーちゃんが、猫たちに言いました。
──ダメだよ。
すると、まわりにいた猫たちは、クルリとうしろをむいて森の中へと帰って行きます。
おばあさんは、あわてて立ち上がります。
「待っておくれよ!おいてかないでおくれよ。もう、いやだよ」
追いかけようとした時です。森は明かりをけしたように、まっくらになってしまいました。