傾城のごとく〜a Children's story〜-3
「これで、セーターをあんであげよう」
するとこんどは、ミーちゃんがおばあさんに近よってきました。
「ミーちゃん。それは、わたしのあみぼうじゃないか」
ミーちゃんは、自分のからだより長いあみぼうを口にくわえて持ってきたのです。
「そうかい。ミーちゃんも同じように思ってるんだね」
おばあさんは、あみぼうを受け取るとさっそく猫のセーターをあみだしました。
「できたよ!」
茶色の小さなセーター。おばあさんはうれしそうです。
「さあ、着てごらん」
さっそく猫に着せてあげます。すると、きずあとはきれいにかくれてしまいました。
「よかったねえ。これで冬もあったかいよ」
そう言ったおばあさんも、心があったかくなります。
茶色の猫はうれしそうに、なかまの中に戻って行きました。
すると、どうでしょう。なかまの猫もおばあさんのまえに集まりだしました。
「おまえたち」
おばあさんはおどろきます。猫たちは、1ぴき1ぴき、毛糸の玉を持っていたのです。
白い毛糸の玉、黒い毛糸の玉、こげ茶色、白黒、はい色と、じふんの毛の色と同じ毛糸の玉を。
そして、1ぴき1ぴきがあたまや首、足やおなかに、きずあとがあったのです。
「そうかい。おまえたちも、あんでほしいんだね」
おばあさんは、地面に座りました。すると、たくさんの落ち葉がふかふかしました。
それは、おばあさんがいつもこしかけている座イスのようでした。
「はあ、こりゃ楽ちんだ」
おばあさんは、笑顔であみ物を始めました。
あたまにはボウシ。くびにはマフラー、足には長いくつした、お腹には腹まきを、1ぴき1ぴき、猫のきずあとにあわせて、おばあさんはあんでいきます。
「なぜかしら。からだが軽いわ」
いつもは、つかれから休み休みあむのですが、この時はまったくつかれません。
おばあさんは、長いれつになって待っている猫のためにあみ続けました。