傾城のごとく〜a Children's story〜-2
森の中。おばあさんはどのくらいあるいたでしょう。
「おや?なんだい、あれは」
おばあさんは立ちどまりました。
先のほうに立っている木のあいだが、ぼんやりと明るくなっているのです。
「まさか。わたしゃ、キツネかタヌキにだまされてるのかねえ」
おばあさんは、こわくなって立ちどまって動けなくなってしまいました。
すると、おばあさんが手に持っている毛糸をなにかがひっぱっています。
「ミーちゃん!ミーちゃんかい。そこにいるのかい」
毛糸は、明るくなっている先へとつづいています。
おばあさんを呼ぶように毛糸はさらにひっぱられます。
「わかったよ。ミーちゃん。そこにいるんだね」
おばあさんは明るくなったところに入って行きました。
「おやまあ」
中に入ると、明るい小さな広場があって、たくさんの猫が集まっていました。
「こんなところで猫の集会があってるなんて、わたしゃ知らなかったよ」
たくさんの猫は、おばあさんの方を見つめています。
すると中からミーちゃんがあらわれました。
「ミーちゃん。よかった」
おばあさんはミーちゃんをだきかかえます。
「心配したんだよ」
ミーちゃんもうれしそうにかおをこすりつけます。
ミーちゃんは、まえ足で大事そうに毛糸の玉をもっていました。
「なくさずにもってたんだねえ」
おばあさんは毛糸の玉を受けとります。するとどうでしょう、毛糸の玉はお家にあったときと同じ大きさでした。
おばあさんは後ろを見ました。いつのまにか、つづいていた毛糸はなくなっています。
「困ったねえ。これじゃ帰れないよ」
おばあさんはしかたなく猫の集会を見ることにしました。ミーちゃんについて帰ろうと思ったのでした。
おばあさんはしばらく集会をながめていました。すると、1ぴきの猫がみんなからはなれ、おばあさんに近よってきます。
「どうしたんだい?」
茶色のしま猫。よく見るとせなかに大きなきずあとがありました。
「こんなに。痛かったろう、毛もなくなってしまって」
おばあさんは悲しい顔で猫をなでてやります。
「ああ、そうだ!」
おばあさんはもっている毛糸の玉を見つめます。猫の毛と同じ茶色の毛糸。