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恋のわがまま
【青春 恋愛小説】

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恋のわがまま-1

根岸 鳴海Side

「来ない…かな。」
俺、根岸 鳴海は待っていた。
大好きな彼女を。
なんのかんので、ようやく付き合い始めた俺ら。
だけど、まだ肝心な言葉を貰ってない。
だから、ついつい試したくなる。
言葉がないなら、態度で…って。
〈今から会いたい。紫水公園のベンチで待ってるから。〉
一方的なメールを送ってみた。
かれこれ30分経つ。
返信メールは届かない。
メールを見たのかさえ疑わしい。
人の気配の無い公園。自分が取り残された気分。
どんどん気持ちが沈んでいく。
「俺だけなのかな?」


こんなに想っているのは。


季節外れのクリスマスソングを口ずさむ。
きっと君は来ない…。
歌詞が分からなくなって鼻唄になる。
帰って出直すか、と考えていた所に
「…鳴海…っ」
少し息が上がっている、俺の待ち人の声。
「…鳴海ってば!」
来てくれた事が嬉しくて、思わず見蕩れてしまっていた。
「亜紀…ほんとに来た。」
さっきまでの沈んでいた気持ちが一気に浮上する。
「ほんとに来た…って鳴海が呼んだから来たんだけど?来ないで1人きりにしておいた方が良かった?」

俺の気持ちを理解していない亜紀は、どうやらご機嫌斜め。
だけど、そんな上目遣いで睨まれても迫力ないし…可愛いだけなんだよね。
「ううん、来てくれて嬉しいよ。待ってたんだから。」
そう言って笑うと、亜紀は大袈裟に溜め息を吐いて俺の左側に座った。
亜紀曰く、自分の右側は俺の位置らしい。
だから俺の左側は亜紀の位置。
たったそれだけの事だけど、それが嬉しい。
重症かもしれない。

「で、何?」
「何が?」
「用事、あるから呼んだんでしょ?」
用事?用事は…。

「会いたかったんだ。」
「はぁ。」
こめかみにピキン、と青筋が入りそうな感じだ。
「急に亜紀の顔が見たくなった。」

はぁ〜…これまた盛大な溜め息が左側から聞こえる。
「…今、何時?」
今?携帯の時計を見てみる。
「6時半。」
「今日は何曜日?」
「日曜日。」
「そう、日曜日の6時半。しかも朝のね。」
「うん、そうだね。」
「会いたいって、この時間の呼び出しはどうだろう?」
「…俺のわがままですかね。」
「わがままだね〜。」
「でも、たまにわがままするのは愛の確認みたいなもので。」

上手く行くかな?
「確認しなくたって分かるだろうに。」
思った通り。亜紀はそうくるだろうと踏んでいた。
「…俺、亜紀から好きだって聞いたことないんだよね。」
じっと亜紀を見る。
少しの沈黙。
「…っきに決まってるでしょ。」
声が小さくてよく聞こえなかった。「何?」と聞き返す。
「…好きに決まってるでしょ!じゃなきゃこんな時間に呼び出されて慌てて来るわけないでしょ!」
顔をこれでもかってくらい真っ赤にして言った。
「…帰って寝直す。親にも出かけること言ってきてないし。」

恥ずかしいのか顔を反らしたままだ。
「朝ご飯、一緒にファミレスで食べて行こうよ。」
帰ろうとする亜紀を引き止める。
「え、いいよ。家帰る。」
いたたまれないのか落ち着かない様子だ。
「…一緒にいたいんだけど。」
「……。」

結局彼女は俺のわがままを聞いて、家に電話をしていた。
〜根岸 鳴海Side Fin〜


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