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恋のわがまま
【青春 恋愛小説】

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恋のわがまま-2

井上亜紀Side

〈今から会いたい。紫水公園のベンチで待ってるから。〉
メールの着信音が部屋に鳴り響き、開いてみたら…。
短い、無駄を省いたようなメールに嫌な予感がして慌てる。

自転車を飛ばして10分。
紫水公園に着く。
ベンチを見ると、いつもと変わらない鳴海が1人座っていた。
側に寄ると、季節外れのクリスマスソングを鼻唄交じりに歌っている。
取りあえずほっとする。

「…鳴海…っ。」
自転車を飛ばしてきたせいで息が上がっている。
少し、驚いたような顔をしてこちらを振り返る。

だけど、何の返事もない。
「…鳴海ってば!」
もう1度声を掛けると、今度ははっとしたように
「亜紀…ほんとに来た。」
と呟いた。
ほんとに来た…?
最初とは違う嫌な予感がしてきた。
「ほんとに来た…って鳴海が呼んだから来たんだけど?来ないで1人きりにしてあげてた方が良かった?」
嫌味を言ってみるが効果が無いようで、にこにこ笑っている。
「ううん、来てくれて嬉しいよ。待ってたんだから。」

はぁ〜と大袈裟に溜め息を吐いてみる。
「で、何?」
「何が?」
「用事、あるから呼んだんでしょ?」

なんとなく、先が読めた気がしたが取りあえず聞いてみる。
「会いたかったんだ。」
悪びれた様子もなく答える。
「はぁ。」
やっぱり、とは思っていたが実際そうだとは…。
「急に亜紀の顔が見たくなった。」

はぁ〜…あたしは再び大きな溜め息を吐いた。
会いたいと言ってくれたのは、嬉しい。だけどね
「…今、何時?」
きょとん、として携帯の時計を見ている。
「6時半。」
そうそう。
「今日は何曜日?」
「日曜日。」
よくわかってること。
「そう、日曜日の6時半。しかも朝のね。」

「うん、そうだね。」
おいおい、謝罪なしですか。
「会いたいってこの時間の呼び出しはどうだろう。」
「…俺のわがままですかね。」
「わがままだね〜。」
「でも、たまにわがままするのは愛の確認みたいなもので。」
………。
「確認しなくたって分かるだろうに。」
ぼそっと呟く。
「…俺、亜紀から好きだって聞いたことないんだよね。」
だから試したくなるわけよ、と続けた。
鳴海を見ると、期待に満ち溢れた瞳であたしの言葉を待っている。

今日は、これが目的か?あたしに自分を好きだって言わせたいが為の確信犯か?
言えばいいわけね、言えば。
「…っきに決まってるでしょ。」
うぅっ、いざ言うと凄く恥ずかしい。
「何?」
よく聞こえない、ともう1度言うように催促される。
「…好きに決まってるでしょ!じゃなきゃこんな時間に呼び出しされて、慌てて来るわけないでしょ!」
自棄になって叫ぶように言ってしまった。顔が赤くなっていくのが分かる。
「…帰って寝直す。親にも出かけること言ってきてないし。」

自分の告白にいたたまれなくなり、その場から去ろうとした。
「朝ご飯、一緒にファミレスで食べて行こうよ。」
腕を強めの力で引き寄せられる。
鳴海の大きな手をリアルに感じて、心臓がどきんーーと跳ねた。
「え、いいよ。家帰る。」
なんか、照れくさくて鳴海をまともに見ることができない。
「…一緒にいたいんだけど。」

結局のところ惚れた弱味であたしは親に電話をする羽目になった。
〜Fin〜


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