ネコ系女 #4-6
【ネコ系女は以外と口悪い】
こんな空気に長居は無用だ。
さっさと渡して帰ろう。
「あっそ。ハイ、これ。と…きっちり三千円。アリガトーゴザイマシタ」
立ち上がったタマに、ジャケットの入った紙袋と三千円を押し付ける。
おおお、と強引な押し付けに後退りしながらもそれらを受けとる。
「私帰るから、じゃ」
ちらっとノエルを見ると「おう、帰れ」とでも言わんばかりだった。
言われなくても帰るわ!ホモネコ!!と心の中で悪態を吐きながらタマに背を向ける。
その時だった。
ぐいっと腕が引っ張られた。驚いて振り返るときょとんとしたタマの顔があった。
「何言ってんの?そんなの俺許さないし」
タマの瞳に私が写っていた。そんぐらい近かった。
「今日はデートって言ったじゃん!」
で、にっこり。
「ノエルもケーキ屋さんと遊びたいって言ってるし。なっ!」
本猫、全くその気無いみたいですけどね。
「…私、用事あるから」
「じゃあその時間まで」
「…私、そんなつもりじゃなかったんだけど」
「俺はそんなつもりだったけど?」
「…私、今日テキトーな服だし」
するとタマは私を頭から爪先まで見て笑った。
「うん、確かに!こないだより全然フツー」
…こいつ、喧嘩売ってんのか。
「でも、分かんなかった!」
タマの黒目がちの目が細く垂れていく。タマは笑うと垂れ目になる。
それはそれは目出度い笑顔で、素直な気持ちじゃなきゃこんな顔は出来ないんだろうな。
と、頭のどっかで考えていた。
「そういうラフなのも似合う、うん!カワイイよ。だからそんな気にしなくていいって、行こう?」
私の腕を引っ張ってタマは歩き出した。振り払って帰ることも出来るけど、なぜかそれをする気にはなれず…。
今まで散々言われてきた単語に、柄にもなく照れてしまった。
あんな風に目を見て「カワイイ」なんて言われると、やっぱり嬉しかった。