ネコ系女 #4-4
「だよな。さすが朝希ちゃん!もっと切れだの、イメージと違うだの知らねっつんだよ」
「…!美容師ってすごい仕事だと思うよ、私は」
思い出したっ。
すると顎髭は私に
「ありがとう。優しいな、朝希ちゃんは」
と笑顔を向けた。
ふう。何とか切り抜けた。
「あ、そういえば友達待たせてるんだっけ?」
「ん。そう」
ちらりと姫代を盗み見るとストローを口にくわえて、暇そうにボーッと宙を仰いでいた。抹茶オレは既に無くなっている。
「へぇ、あの子?結構カワイイじゃん。今度さ、俺もツレ連れてくっから四人で遊ばない?」
慣れたようにそう言う顎髭を見上げた。どう?と首を傾げる。
私は少し考えるフリをして
「いいけど…。私はアツシ君と二人でもいいな…」
と得意の上目使いをした。
顎髭はニンマリとして、テーブルの上に置かれていたケータイを手に持った。
「…教えて?」
私も微笑んでケータイを取り出した。
その日の夜。
案の定、顎髭から遊びに行こうとメールが来た。
ただ、顎髭が指定してきたのは来週の水曜日。
タマの顔が頭をよぎったが、そのままヒュンと通り過ぎた。
ソッコーOKの返信。
タマとは早目に切り上げよっと…。
てことで、私達は夕方から遊ぶ約束をしたのだった。
【ネコ系女は薄情】
そして一週間後。
私はくれいむに向かって歩いていた。手にはジャケット(クリーニング済)を持ち、財布には三千円が別にされて入っている。
ちなみにタマは昨日まで、毎日欠かさずくれいむへ通った。
確か昨日はシュークリームとマンゴーのジュレを買っていただいた。毎日毎日、売上貢献ありがたい。
姫代とはすっかり顔馴染みになり、姫代は更にタマを勧めるようになった。
「タマさんいいよ!朝希!絶対タマさんいいよ!」
昨日の帰り道に姫代は興奮気味にそう言った。そして
「明日楽しみだね。頑張ってね!」
とも言った。
残念ながら楽しみでもないし、何も頑張らない。ごめんよ、姫代。
私、気合いは今日の夜まで取っとくって決めてるから。