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a village
【二次創作 その他小説】

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@-7

「あの…校長先生…」

 雛子は高坂に声を掛けた。

「何です」

 高坂はにこやかな表情を崩さず雛子の方を見た。

「先ほど…あの、野良着を着てらっしゃいましたが、あれは?」
「ああッ、あれは花壇と鶏小屋の世話をやってたんです」
「ええッ!鶏小屋を?」

 高坂は、雛子のすっとんきょうな声に小さく笑うと頷いた。

「校舎のむこう、校庭側に花壇と鶏小屋があって一応、子供達に世話を任せてるんですが細かいところまでは…だから私が見てるんですよ」
「でも…校長先生も忙しいでしょう?」
「なあに、私は土のう袋のような物ですよ」
「土のう袋?」

 高坂は大きく頷いた。

「普段は何の役にも立たない。先生方に学校を任せてるんです。
 ただ、大事が起こったら私が前に立って責任を取る。校長いうのはそんなモンですよ」

 2人は階段を下り、生徒を待つ。最初に現れたのは雛子も知っている子供だった。

「ヨシノちゃんッ、おはよう」

 声を掛けられ、ヨシノは顔を上げた。雛子を見て照れたような顔で頭を下げる。

「お、おはようございます…」

 麻布の手下げ袋に、背中には──貴之─だったか、赤ん坊をおぶっている。
 重みに耐えて階段を登る姿を見て、雛子は思わずヨシノに近寄った。

「大丈夫?私、後ろから抱えてるからね」

 右手で赤ん坊を抱え、ヨシノに合わせて階段を登る雛子。

 ──ああ、この子なら大丈夫だ。

 彼女の気持ちを見た高坂は、安心の笑みを浮かべた。

 その後も子供達は校門前に現れる。ヨシノ同様、赤ん坊を連れて来る生徒は1人や2人でない。
 中には、4?5歳位の兄弟を連れて来る子もいた。
 雛子にはすぐに分かった。彼女が居た長野の小学校でもあったことだ。

 百姓を生業とする家では、農繁期には皆が田畑にかかり切りになる。赤ん坊を世話するものなどいない。
 だから、兄や姉が赤ん坊の面倒をみるのは当たり前だ。雛子のクラスメイト30人中、7人が弟や妹を連れていた。

「センセーッ!おはようッ」

 そんな落ち込みそうな雛子の気分を、払拭してくれる声。
 大や公子、三郎に和美など昨日会った子供達が、声を弾ませ次々と通り過ぎていく。

 時刻は8時近くになり、子供の姿が途絶えた。

「校長先生。生徒はこれで全部ですか?」

 雛子が何気なく訊ねると、高坂はゆっくりと首を振る。

「3年生の景子ちゃんという子が風邪をひいて休んでます。それと……」

 高坂はそこで口をつぐんだ。
 雛子が不思議に思っていると、息を切らせて駆けて来る子供の声が聞こえた。


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