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a village
【二次創作 その他小説】

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@-6

 ──うああ…きれい。

 コンクリートの台座に、磨かれた石が隙間なく埋め込まれた門柱。
 かなりの年数が経つのか、美和野分校と刻まれた真鍮製の板は、苔むしたように変色していた。
 門柱のむこうには階段と同じ幅でコンクリートの道が奥まで続き、道の左右を桜やソテツ、カシの木が大きく枝葉を伸ばしている。 特に桜はもうすぐ見ごろのようで、淡い色で小さな花がずいぶん咲いていた。

「きれい…長野の学校より、とっても素敵」

 雛子は心弾ませ門を潜り、コンクリートの道を進んで行く。木々に囲まれた先に、小さく黒っぽい建物が見えた。

「これが校舎…?」

 木板の外壁は全体に表面が焼かれて焦げた色をし、窓枠にはニス塗りが施されている。

「なんだか、戦前の学校みたい」

 恐る々校舎に近づいた雛子は、入口らしき扉を見つけると中に入った。
 そこはちょうど下駄箱で、左手は講堂が、右手は廊下が見える。
 雛子は靴を上履きと履き替え、革靴を下駄箱の1番上に置くと廊下の奥に有る職員室を訪れた。扉を開いたが誰も居ない。

 ──ちょっと早過ぎたかな…。

 雛子は誰も居ない机のイスに腰掛けた。拍子抜けの雰囲気に、集中していた気持ちが思わず緩む。

 すると、

 突然、音を立てて職員室の扉が開いた。雛子は反射的に勢いよく席を立つ。

「あッ、お、おはようございます!本日付けで美和野分校にお世話になる河野雛子ですッ!」

 緊張から早口になる雛子。相手はその勢いに一瞬、ポカンとしたが、すぐに笑顔になった。

「ああッ!こちらこそ初めましてッ。私、校長の高坂ですッ」
「こ、校長先生ですかッ?」

 目の前に現れた男性が校長と聞いて雛子は驚いた。その姿は野良着だったからだ。
 だが、高坂は気にした様子も無い。いつもの事なのだろう。
 彼は壁に掛かる時計で時刻を確認すると、雛子に笑みを向けた。

「ところで河野さん。今から私に付き合ってもらえますか?」

 突然の申し出。雛子は恐る々、高坂に理由を尋ねた。

「なに、大した理由じゃありません。校門の前で、子供達を出迎えるんですよ」
「行きますッ!いえ、行かせて下さい!」

 雛子は、すぐに高坂の考え方に共感した。そんな彼女に高坂は微笑むと、

「じゃあ、ここで待ってて下さい。ちょっと着替えてきますから」

 そう云って職員室を出て、となりに設けられた校長室に入っていった。
 再び現れた高坂は、カッターシャツにループタイ、ネズミ色のズボンにサスペンダーといういでたちだった。

 短く刈上げた髪型に黒ぶちメガネ。恰幅のよい体型によく似合っており、雛子は可愛らしささえ感じた。

「では、参りましょうか」
「は、ハイッ!」

 雛子は高坂の後ろを付いて元来た道を後帰る。


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